夢幻なる絆

□3.居場所
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あれから二ヶ月が経ち、私は未だにタイムスリップを出来ずに寂しい日々を送っている。
帯刀さんから貰ったかんざしがこっちに来ていたから夢だって思うことはなくなったけれども、ここまで来るともう二度と幕末にはいけないんじゃないかと思い始めるしかなかった。
大体タイムスリップすること自体そう何度も何度も出来るわけじゃなく、あの二回が奇跡だったと納得するしかないのかもしれない。
諦めるしかないんだよね。

それに例えもう一度帯刀さんに逢ったとしたら、私はどうする気なんだろう?
すでに結婚しているだろうから、私の居場所なんてどこにもない。
勢いあまって告白しても玉砕するだけで、せっかく塞ぎかけた心の傷がまた開くだけ。
良いことなんて、何一つないと分かりきっている。

だけど、それでも
私は・・・
帯刀さんに逢いたい。
声が聞きたい
顔が見たい。




「運命の輪か・・・。そう言えば一番最初にタイムスリップした時も、運命の輪だったよね。それってどんな・・・ひょっとして?」

何気なくやっていたタロットの結果を見た瞬間、私はふっと望みである可能性が過ぎった。
それはただの私の思い込みかも知れないけれど、どんなに小さい可能性でも私は信じて実行する。

それが私なのだ。

そして私はタイムスリップのために買って用意したウエストポーチを身につけ、帯刀さんのかんざしをセットした。
素早く準備完了させ、私はベッドに横になり祈るように目をつぶる。

するとタイムスリップの予兆である落ちる感覚がして、目を恐る恐る開けるとやっぱり思った通りの展開。
ただ見渡す限り一面の銀世界と過去二回は朝だったのに今は夕方で、真下には帯刀さんが微笑みながら両手を広げている。
それは信じられない光景だった・・・。


「凪くん、いらっしゃい。待ってたよ」
「え、あの〜お邪魔します?」

落ちてきた私を上手くキャッチしてくれた帯刀さんはギュッと私を抱きしめ、耳元でそっと嬉しそうに囁いた。
途端に鼓動が高鳴っていくけれど、予想も付かなかった展開に頭の中はパニックになる。

私はなんで帯刀さんに抱きしめられてるの?
しかもこんなに強く?

「来た早々悪いけど、これから私に付き合って貰うよ」
「付き合うって、どこにですか?」
「英国公使主催のパーティー」

「は、え〜パーティー??」

この時代には考えがたい行事を言われ、私は耳を疑い声を上げて復唱してしまった。

帯刀さんにはいつも驚かされてばかりいる。
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