夢幻なる絆
□3.居場所
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目が覚めるとそこにはもう帯刀さんはいなくて、窓から晴天の空を見上げるとすでに太陽は真上まで昇っている。
つまり今は昼。
帯刀さんがいなくても当然だ。
「凪、おはよう」
「ニャ〜ン」
「あ、二人とも、おはよう。でも今はもうおそようかな?」
私の元にやって来たシロちゃんとシロちゃんの背中に乗った猫ちゃんに朝のあいさつを交わされ、私も朝のあいさつをお昼のあいさつに変え苦笑した。
いくらなんでも寝過ぎだ。
良く帯刀さんに叩き起こされなかったと思う。
それにしてもこの組み合わせは滅茶苦茶愛らしくて、顔の筋肉が歪みきりメロメロになる。
写真を撮って部屋に飾っておきたい。
「ちょっとこのままで待ってて。今デジカメを持ってくるからね」
と言いながら鏡台に置いてあるデジカメを取る。
このデジカメにはパーティーや結婚式の写真がたくさん入ってる。
大切な大切な私の宝物。
バッテリーがそろそろヤバいんだけれど、これは撮っても損はない。
「一瞬だけ眩しくなるけれど、ちょっとだけ我慢してね。はい、ポーズ」
って言って素早くペットモードにして、シャッターを押す。
パシャッ
「ニャン」
「ななんだ?」
それでも二人はやっぱりびっくりして、そして驚く。
その姿も愛らし過ぎて一枚ゲットしたかったけれど、これ以上混乱を招いたら可愛そうだ。
「ごめんごめん。それじゃぁ私は着替えて帯刀さんに」
「小松帯刀なら今朝早くに連れの者達を引き連れて出掛けて行った。帰りは遅くなるから、先に寝るようにと伝言をもらっている」
「そうか。お仕事か・・・」
ハイになっていたテイションがシロちゃんの言葉で、一気に沈み悲しくなってしまった。
そりゃぁ帯刀さんは家老だから仕事は山のようにあって私に構っていられないことぐらい分かっているけれど、妻らしくいってらっしゃいとお帰りなさいぐらいはちゃんと言いたい。
あ、おはようとおやすみなさいも。
・・・ただ朝寝坊した私が、悪いんだけれど・・・。
「淋しいのだね?」
「・・・うん。ちょっとね」
「凪には我がいるだろう?我が凪のその悲しみを拭ってやろう」
「・・・ありがとう、シロちゃん。だけど・・・」
そんな私に異変に気付いたシロちゃんは私に寄り添い優しい言葉を掛けてくれ、私はシロちゃんをギュッと抱きしめ少しだけ笑う。
シロちゃんの気持ちは嬉しくても、シロちゃんは帯刀さんの変わりにはなれない。
シロちゃんはシロちゃんで、帯刀さんは帯刀さんだから。