夢幻なる絆
□3.居場所
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終わりのない暗い闇の中何かとてつもない恐怖に追われ、私は必死に休むことなくただがむしゃらに走っていた。
立ち止まれば死んでしまうそんな気がしたから。
だけどそれが何日も続き疲れ果て諦めかけた頃、ようやく遙か先に小さな光が見えたんだ。
私を元の世界に戻してくれる希望の光。
だから私は持てる力を振り絞って、光を目指し走り続けることが出来たんだ。
そして
光にゴールして目が覚めると、そこは私が一番帰りたかった場所だった。
手から伝わる最愛の人の温もりに気づき視線を向けると、私の手を握りしめた帯刀さんが座ったまま眠っている。
私の帰る場所はもうここだけにしたいけれど、それだけは出来ない無理な相談。
ずーと走り続け恐怖と戦いながらも、私は帯刀さんのことばかり考えていた。
そしたら私は自覚してしまった。
私の最大の恐怖は帯刀さんの傍にいられないことだ・・・って。
いくら愛されていると分かっていても、こうやって傍にいないと不安でしょうがない。
でも私はきっと未来に戻ってしまう。
「気づいたんだね。気分はどう?」
「もう大丈夫です。心配かけてごめんなさい」
目を覚ました帯刀さんは優しい笑顔を私に向け、おでこに手の平をあててくれる。
暖かくて気持ちがいい。
「気にしなくてもいいよ。すべては白虎に原因があるのだからね」
「反省しておる。だから我はそなたの提案を聞き入れると申してるだろう?」
と浮かない面をした白虎がやって来て、そう言い私の頭上辺りに座った。
「当たり前。夕凪、白虎の一件は私達夫婦だけの秘密にしておこう。そしてもう何があろうとも絶対に、あの能力は使わないと約束しなさい」
「はい、分かりました。もう使いません」
約束と言うより強制だったけれど、私もこんな思いまでして中途半端な能力を使いたくなかった。
あんな能力ない方がマシだ。
「そう言うことだから、今から白虎はシロと言う名の猫」
「シロちゃん・・・いいの?」
「夕凪イヤ凪の傍にいることが許されるのならば、そのような名でも猫だろうといたしかたぬ」
外見らしく愛らしい名前に白虎は、不満ありつつも渋々頷く。
夕凪と呼んだ瞬間帯刀さんが睨み言い直したのは、何か理由でもあるのだろうか?
白虎が帯刀さんに逆らえない?
しかも私は白虎に気に入られてる?
なぜ?
「白虎がそれでいいんなら、シロちゃんこれからよらしくね」
数々の疑問が思い浮かぶ物の白虎が良いと言うのなら反対する理由もなく、そう言い白虎・・・シロちゃんの頭をなぜ私は起き上がった。
「では後は久しぶりの夫婦の時間なので、シロはその猫を連れて出て行ってもらえますか?」
「約束だから、仕方があるまい」
やっぱり帯刀さんの命令に逆らえないシロは、言われた通り猫ちゃんを食わえ大人しく部屋を去っていく。
その姿はどこか寂しそうでちょっとだけ可哀想だったけれど、私も帯刀さんの意見に賛成だったから何も言えずにいる。