夢幻なる絆

□3.居場所
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「なんか偉いことになってますね」
「そりゃぁ私の婚礼式だからね」
「ですよね帯刀さんは天下の家老様。しかも女性達が人気が高い・・・。忘れていた分けじゃないけれど、ちょっと気後れしちゃうよ」

式場である下鴨神社に牛車で到着した私は、ついそんなぼやきを帯刀さんにしてしまい肩をガクンと落とす。

ここに来るまでの間に一体どれだけの女性の泣き声を聞いたんだろう?
・・・次から次へと一行に泣きやむことがなかった・・・。
それは帯刀さん人気を物語っていた。

私はその女性達に、当然怨まれている。
女性の怨みは何よりも怖いから、しばらく私が帯刀さんの妻であることを伏せとこう。
そして出席者も何気に多く、徐々に緊張して来る。
堂々と物応じない帯刀さんが羨ましい。

「まだ時間が少しあるようだから、夕凪はどうする?」
「糺の森に行きたいです」
「奇遇だね。私も同じこと考えていたよ」
「本当ですか?以心伝心ですね」
「・・・夕凪、だからそう言う言い方は辞めなさい」

同じことを考えていたのが嬉しくてただそれに似合った言葉を言っただけなのに、なぜか呆れられて注意されてしまった。

そう言う言い方は辞めなさい?
以心伝心が?
なぜ?

「もういいよ。だけどいくら無自覚でも、そう言うのを言うのは私だけにしなさい。いいね、分かった?」
「はい、分かりました」

理由が分からなかったけれど、あまりにも帯刀さんが真剣に言うから頷いて見せる。






「あ、やっぱりこの時代にもあった。連理の賢木・・・」
「夕凪が私と見たかったのはこれ?」

糺の森を二人仲良く歩くことしばらくして、ようやくお目当ての物を見つけて立ち止まる。
場所も違うし目立たないからどうしようかと思っていたけれど、なんとか見つかって一安心。

連理の賢木
二本の木が途中から一本になっている不思議な木。
この木が枯れてもまた同じような木が見つかり、未来で私が見ているのは4代目だと言う。
縁結びの御利益があると有名で、私は昔この木に憧れていた。

「はい。私達も連理の賢木見たいな夫婦になりたいなって思ったので・・・」
「・・・以心伝心ね・・・。そんな夕凪にこれから誓い合おう」
「え?」
「西洋では婚礼式で指輪の交換をするそうだよ。だから作らせてみた」

私の肩を寄せ帯刀さんは何か納得した顔になり、そう言いながら二つのシルバー指輪を私に見せる。
中央にオレンジの石が入っていて、キラキラ輝いている。
未来では結婚指輪は当たり前だけれど、幕末ではまだない風習。
アーネストに教えて貰ったのかな?

「綺麗ですね」
「この石は元々一つの石を二つに割った・・連理の賢木とは真逆の物だよ。はい、これ」
「嬉しいです。だったら左手を出して下さい」

受けとった指輪を帯刀さんの左手の薬指にはめ、今度は私の左手を差し出し帯刀さんを見て微笑む。

「夕凪は知ってるんだね」
「はい、未来の日本では主流ですからね。これは結婚してる証ですから、絶対外したら駄目ですよ」

すぐに私の薬指にもはめてもらい、ちょっと大袈裟に結婚指輪の意味を語る。

こんなことアーネストに聞かれたら嫌みを言われそうだけれど、結婚指輪は外してもらいたくなかった。


そして私達は連理の賢木の前で、一足早く永遠の愛を誓う。



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