夢幻なる絆

□2.高嶺の花
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「凪くんって、鈍感って言われない?」
「いいきなり図星をズバッて、言わないで下さい」
「やっぱり図星なんだ」

藩士達の反対を押し切り帯刀さんは歩いて帰ると言いだし、こうして夜道をお供もつらずに二人だけの帰り道。
何を思ったのかいきなり触れられたくないことを振られ、気が動転しつつバカな返答をすればやたらに納得されしかも笑われてしまう。

またしても帯刀さんにとって私は邪魔な存在になって、今夜みたい騒動がすぐに起こって今度こそ私はお蔵行きになるかも知れない。
そうなる前に何か対策を考えないといけないんだけれど、お馬鹿な私には帯刀さんを感心させられる対策なんて考えられないよ。
せめて迷惑にならないようにしない・・・。

ドテッ


思った矢先から石に躓き、派手に転ける。

「痛〜い」
「まったく・・・。手を貸しなさい」
「すみません。ありがとうございます。・・・え、あの帯刀さん?」

呆れながらも帯刀さんは手を差し伸べてくれ私はその手を握り立ち上がるが、普通ならすぐに手を放してくれるはずなのに握られたまま歩き始める。
それは何を意味しているのか、理解を苦しむ私。

「なんか文句でもある?」
「別にないですけれど・・・勘違いされたら帯刀さんが、困るじゃないですか?それとも相手が私だから絶対ないとでも、高を括っているだけですか?」
「そうだね。相手が君だから、困らないよ。それとも凪くんが困るの?」
「だと思いました。ちなみに私だって、ちっとも困りません」
「じゃぁ、行くよ」

以前と同じように私のことなどなんにも思っていない様子の答えに、私もそう言って繋いだ手は離れることなく歩き続ける。
幕末の夜道は街灯がないため、未来よりも暗く提灯とお月様の明かりだけが頼り。

この暗さになれてない私にはありがたいけれど、それは帯刀さんには秘密にしとこう。
勘違いされてバサリと振られたら、いくら帯刀さんに恋心がなくてもショックだもんね。
と言うか告白して振られるより、ある意味ショックだと思う。

「誤解されたら困りますから、ここで宣言しときます」
「宣言?いきなり何?」
「私絶対帯刀さんのこと好きになったりしませんから、どうぞご安心下さい。ちゃんと私は凡人以下だと分かっていますから、無謀なことはしません」

そうならないように私は、帯刀さんの顔を見上げビシッと強気に宣言する。
これで私は誤解されることはない。
すると帯刀さんは、おかしそうに笑う。

「本当に凪くんって、恐ろしいほど鈍感でバカだね。そこまで断言されると、逆に安心するよ」
「?」

なんか少し違った解釈された気がして、私は首をかしげ頭をかく。

まぁでも分かってくれれば、別になんでもいいんだけれど・・・・。



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