夢幻なる絆

□2.高嶺の花
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「私が入っていいよと言うまで、ここで大人しく待ってるんだよ」
「はい。分かりました」
「ここに来てから、随分機嫌がいいんだね」

私の変なハイテイションに弱冠引き気味の帯刀さんは、そう言って一人先に座敷へと入っていく。

例の如く籠島に乗せられてやって来たのは、かの幕末では有名な池田屋だった。
テーションが上がるのも無理ないだろう。

現代の跡地にある居酒屋には何度か行ったことはあるけれど、やっぱ本物は格が違うね。

「帯刀、遅かったじゃねぇか?」
「すまない。忙しい所呼び出して悪いね」
「御家老の誘いなら、構いません」
「俺はただ酒が呑めるなら、いつでも大歓迎だせ」

座敷の中から、緩い会話が聞こえて来る。
会話からして帯刀さんの部下の人と、同格クラスか友人の二人。

一体これからどんな宴会が、始まるか見物である。
そして私をなぜ連れて来たんだろうか?
帯刀さんは合理的なことしかやらない人だから、きっとちゃんとした理由があると思う。

・・・・・・・。

まさかお邪魔虫でしかない私を人身売買する?
帯刀さんは天下の家老様。
んなことするはずが・・・ある。

「凪くん、入ってきなさい」
「あ、はい。失礼します」

そんな不吉が過ぎる中、罰が悪いことに合図が掛かる。
逃げ出したくても逃げられなくて、私は恐る恐る大河ドラマのお姫様を真似て障子を開け行儀よく中へと入る。

座敷にはやっぱり二人の男性。
一人は黒みがかった茶髪で誰とでも仲良く出来そうな雰囲気の二十代半ば。
もう一人は外人だろうか、金髪でいかにも体育会系の私より確実に上。
帯刀さん同様二人もとにかく美形で、オーラがやたらに眩しすぎる。
こんな花があるメンバーの中だと、凡人以下の私なんて霞にもならない。

気のせいなのか二人の私への視線が、奇妙な物を見ている気がするんだけど・・・。
それはやっぱり私の外見が、凡人以下だから?
あまりにも場違いすぎて、速攻で帰りたくなってきました。

「凪くん、自己紹介出来るよね?」
「はい。私島崎夕凪。通称凪です。宜しく、お願いします」

それでも帯刀さんは私を恥ずかしがることなくそう言うから、私はちゃんと名を名乗り頭を深く下げる。
せめて行動だけは、大物でも恥じないように。

「へぇ〜、俺は坂本龍馬」
「西郷隆盛です」


「え〜!!土佐弁じゃない坂本龍馬に、おもいっきし外人の西郷隆盛???」


男性達も名を名乗った瞬間、私は信じがたい真実に声を張り上げ男性達を指差す。



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