夢幻なる絆

□2.高嶺の花
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私以外の人だったら、間違いなく誤解するだろうね。
帯刀さんが自分に気があるんじゃないかって。
私は自分をよく知ってるから、そんな図々しいこと思ったりしない。

高嶺の花になんか、絶対に好きにならない。

そもそもこんないぢわるな人を好きになったら、私は究極のドMになって今以上に変態になちゃう。

「違うこれは現実。帯刀さんは帯刀さんの物」
「やっと理解したんだね。そう私は君の幻影じゃない」
「・・・性格悪いですよ」

やっぱりと言わんばかりの帯刀さんらしい終わり方に、嫌味を込めて憎たらしく吐く。
怒るのもバカバカしい。

「褒め言葉に受けとっておくよ。ありがとう」
「・・・・。そう言えば、私が戻ってからどのぐらい経ちましたか?」

上機嫌の帯刀さんには何を言っても効果がないと思い、潔く話題をまったく異なることに変えここは大人しく食い下がる。
その方がきっとお互いに良いと思ったから。
それにこの話題は少なからず気になっていたのは確かである。

私の世界ではおおよそ一ヶ月だったから、こっちでもそのぐらい?

「今は八月だから、四ヶ月経ったよ」
「そんなに?」
「まったく君が猫の面倒を見るって言うから許してあげたのに、翌日になったら猫だけ残して跡形もなく消えてたからね。もう二度と来ないだろうと思っていたら、いきなりまた現れた途端今度は爆睡。君はどこまで自分勝手なの?」
「そうだったんですか。それはすみませんでした。だけど猫ちゃんを飼ってくれて、ありがとうございます」

うんざりとばかりに帯刀さんはそう言うから、私は苦笑しながら謝りお礼も言った。
こればっかりは帯刀さんの言い分が正しくって、私はただ素直に謝るしかない。

理由はどうあれ、帯刀さんとの約束を速攻破ったのは私。
だから本来なら仔猫を捨てたって良いのに、帯刀さんは仔猫を飼ってくれた。
育ててくれたのは女房達だと思うけれど、それでも感謝に値する。

「どういたしまして。そう言うことだから、さっさと行くよ」
「了解です」

単純な私はついさっきまであんなにムカついていたのに、帯刀さんの優しい一面見られてすっかり気分が良くなり笑顔で頷いた。


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