夢幻なる絆

□2.高嶺の花
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「ほぉー、馬子にも衣装をとはまさにこのことだね。とっても似合ってるよ」
「一応お礼を言っときますね。ありがとうございます」

女房達に着物を綺麗に着付けてもらい帯刀さんの部屋に行くなりクスクス笑い感心しながら皮肉を言われ、私はこめかみを引き攣らせながらも棒読みでお礼を言う。
途端に帯刀さんへ殺意を抱く。

まさかそれを言うためだけに、こんな金を掛けたいたずらをしたとか?
だとしたら帯刀さんは最悪だ。

これは本当に私の夢?
そしたら私って、実は飛んでもないドM?
だから帯刀さんは、こんなドSな人になってるの?

「それじゃぁ行くよ」
「行くってどこに?そんなに引っ張ったら転けちゃう・・・うぁぁ??」

頭に血が上り今さら夢であることを疑問に思い始める中、帯刀さんが自分勝手にそう言って私の腕を掴み引っ張って無理矢理どこかに連れて行こうとする。
拒否するよりも警告する途中私は予想通り畳の節に躓き、帯刀さんを巻き込み派手に転けてしまった。

夢なのに、転んだ所が痛い。
リアルと同じ痛さ。

「まったく君って言う人は・・・」
「だから言わんこっちゃない。私の扱いにはくれぐれも・・・?」
「ねぇ凪くん?この状況って男女逆だと思わない?」
「え、男女逆?・・どわぁぁ〜!

私の失態を怒ることなく帯刀さんは意味ありげにそんなことを問い、私は不思議にお思いながら状況を見回すと私が馬乗りになっている。

確かにこれは男女逆の展開だ。
つまり私が攻めで、帯刀さんが受け。

「ないない。それだけは絶対にありえない」
「絶対にありえないって、こう言うこと?」
「?」

まるで私の考えを知ってるかのようにからかうように、帯刀さんは身を起こし顔を近づけ額に軽くキスをする。
急速な考えられない展開に、私の頭はショート寸前になり胸が高鳴りだす。

これは絶対に夢じゃないくて、紛れもない現実。
何がきっかけか分からないけれど、私はまたタイムスリップしたらしい。
だからこれは私が望んでいる事じゃない。

うん、絶対そうだ。
だからこれは、怒ってもいい。
怒って当然だよね?

「何するんですか?」
「私は幻影なんでしょう?つまりこの行動は、君の意思で私の意思ではない」

額を懸命に擦りながら激怒するのに、そんなふざけた答えが返って来る。
しかも最後の台詞たけ、耳元で甘く囁く。
途端に寒気と恐怖を感じ、帯刀さんから急いで離れた。



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