夢幻なる絆

□2.高嶺の花
17ページ/20ページ



「ねぇ猫ちゃん。どうしよう?私もっと帯刀さんの傍にいたい」
「だったらいればいいでしょう?言ったはずだよ。いつまでも、我が家に居ても良いって」
「・・・帯刀さん」

心の奥が暖かくなって途端に思い始めた素直な気持ちを猫ちゃんに打ち明けると、いきなり帯刀さんの素っ気ない口調の声が聞こえてる。
でもそれは優しさが溢れていて、余計ドキドキが止まらない。

・・・私帯刀さんが、きっと好きなんだ。
ただこの想いを告げなくても、今まで通り傍にいられるだけでも構わない。
そう言う今までにもないちょっと変わった好き?
だから告白するつもりなんてまったくない。

「ほら、一緒に帰るよ」
「はい」

そんな自分の正直な気持ちに気づいたら不思議と心が軽くなって、帰ることに何も抵抗がなくなり素直に頷けた。
すると帯刀さんは何も言わず、私に荷物を持ってくれて歩き出す。

「龍馬、いろいろ迷惑を掛けたね。このお礼は後日にするよ」
「良いって事よ。なんせ、俺と凪は親友なんだからな。なぁ、凪?」
「うん。本当にありがとう。龍馬」

帯刀さんが龍馬のお客さんだったのか、渡り廊下に龍馬がいてニッコリ笑顔で私達を見送る。
さんざん迷惑掛けまくったのにそう言ってくれる龍馬が、神か仏に見えて嬉しかった。

龍馬は本当に良い奴だ。

それにしても私があの坂本龍馬の親友だなんて、言っても誰も信じてくれないだろうな。
ましては小松帯刀が好きとか言ったら、私は今よりも変態でおかしい人になってしまう。

まぁ言うつもりなんてないから、別に良いけどね。



「帯刀さん、これ似合いますか?」
「ああ。だけど付け方が違うよ。・・・ほらこれでいい」
「えへへ、ありがとうございます。一生大切にしますね」

あの宴会の帰り以来の二人だけの帰り道。
私は家まで待ちきれなくって手鏡を見ながら付けてみたかんざしを見せると、帯刀さんは立ち止まり私に近づきかんざしを付け直してくれる。
接近してきた帯刀さんに鼓動が高鳴るけれど、それは優しくて気持ち良い高鳴り方で笑っていられた。

いい年してこんな気持ちが初めてで、大切にしていこうと思う。
ただこの想いを育てるつもりはない。
だって育てたら・・・ね



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ