夢幻なる絆

□2.高嶺の花
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「そろそろ帰ったらどうだ?きっと帯刀だって心配してるぞ」
「いやだ。今日は絶対に帰らない」

いつの間にか綺麗な茜色に染まった空を見つめながら、困り果ててる龍馬の言葉を強情になって否定。

帯刀さんの顔を見たくないのが一番の原因だったけれども、未だに整理が着かない心のままでは会いたくなかった。
どんなに時間を費やし考えても、帯刀さんは自分にとってどんな存在なのか分からないでいる。

「俺も一緒に行ってやるから、そう言うなよな」
「龍馬は迷惑なの?なら私出ていくよ」
「それだけは絶対駄目だ。怨霊に襲われたら、どうする気だ?」
「・・・・・」

明らかに私を迷惑がっていることが分かり単刀直入に聞けば、痛い図星を付かれそれ以上何も言えなくなる。

私ってやっぱり馬鹿で、どうしようもない。
すぐ感情的になってみんなを困らして、今見たく騒ぎを起こす。
自分でも最低な人間だって思う。
こんな人間がエリートの帯刀さんと釣り合うはずがない。
だから私は絶対に帯刀さんを好きにならないと決めていたのに・・・。


「龍馬さん、お客様が来ました」
「お客?分かった、今行く。凪はここで待ってろ」
「うん、分かった・・・」

そう言われて頷くと龍馬は出て行くと、変わりに猫が入って来て私に擦りそってくる。
帯刀さんちで飼っている猫ちゃんだ。

「ニャ〜ン」
「お前、わざわざ私を追ってここまで来たの?」
「ニャン」

驚き解いても猫ちゃんは嬉しそうに鳴くだけで、何も分からずでもそんな気がした。
この子は人の気持ちが分かる頭の良い猫。
だから私を心配して、ここまで来たのかも知れない。

「ありがとう猫ちゃん。所で猫ちゃんは何背負ってるの?外してもいい?」
「ニャン」

と(多分)猫ちゃんの快い承諾を貰ったので、私は背中に巻き付かれた布を取り開ける。
中からは品の良い高そうなかんざしと、小さく丁寧に折られている和紙が一枚。
和紙を丁寧に開くとそこには

すまない。        小松帯刀

それだけ私にも読める字で書いてあった。
普段は達筆で読めない帯刀さんの文字なのに、わざわざ私なんかのために書いてくれたんだ。

思えば帯刀さんは、いつも私のことを考えてくれている。
どんなに私がヘマしても、呆れても見捨てずにいてくれた。
帯刀さんは意地悪だけれど優しくて、傍にいるとありのままの自分でいられる。

それに帯刀さんは私以上に私のことを理解してくれて・・・。
・・・・・・・・。
・・・・・・・・。

こんな人今まで私の周りにいなかった。



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