夢幻なる絆

□2.高嶺の花
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「ずいぶん早い帰りのようだけど、加茂川には行かなかったの?」
「帯刀さん、ごめんなさい」
「え?」

不思議そうに問う帯刀さんに構わず、私はいきなり土下座してすべてのことを謝った。
すると帯刀さんは目を丸くして驚き唖然と私を見つめる。

見た感じは機嫌が悪い感じはしない。
だけどだからと言って、機嫌がいいって訳でもない。

「私帯刀さんにいつも迷惑掛けているのに、それでも言うこと聞かずに帯刀さんを怒らせてますよね。私は居候の身なんだから、大人しくしてないといけないのに・・・」
「本当に凪くんは馬鹿だよね。・・・なんで君は、そう言う解釈しか出来ないの?」

ちゃんと理由を言って深く反省しているのにいつものように馬鹿にされ、まるで私が反省してるのが的外れな言い方をされてため息をつかれてしまう。
さっきの西郷さんと同じだ。

だけどそれはどう考えてもそう言う解釈しか出来なくて、二人が何を言っているのか分からず理解に苦しむ。
たまに帯刀さんは変なことを言って、私を困らす。

「ならどう言う解釈をすればいいんですか?」
「分からないんなら分からなくてもいいよ。凪くんは今のままの凪くんでいればいい」
「私のこと馬鹿にしてます?」
「少しだけ」

答えを求めても答えてくれず、そう言いクスクス笑い出す。
これもまた私には理解に苦しむ物で、首をかしげながらない脳みそをフル回転させて懸命に考えた。
だけどやっぱり分からない。

「御家老、入ってもよろしいでしょうか?」
「西郷?ああ、構わない」

そこへ障子の向こうから西郷さんの声がして帯刀さんの許可を得てから、障子がゆっくり開き切ったスイカを持ってきた西郷さんが入って来る。

これが本来正しい帯刀さんとの会い方だと思うけれど、私は今までそんなことをしたことがない。
それになぜか帯刀さんも文句は言わず、許してくれている。

「御家老。三人で西瓜を食べましょうよ。美味しいですよ」
「そうだね。そうしよう」
「西郷さん、ありがとうございます。切ってくれたんですね」

スイカに目がくらみ考えることを諦めた私は西郷さんから受け取り、早速中心分を豪快にかぶりつく。
スイカはここが一番美味しい。

「う〜ん。冷たくて甘い。幸せ。さすが、西郷さん」
「だから言っただろう?御家老はどうですか?」
「・・・美味しいよ。ありがとう西郷」
「また買って来て下さいね」
「そうだな。また買ってくる」

帯刀さんもすっかり機嫌が元に戻って、私はますます嬉しくなってニコニコだった。
スイカは美味しいし、みんなが笑顔で会話している。

今日はとっても良い日だな。


そして帯刀さんは最後にこう言ったんだ。


明日から西郷か龍馬と一緒なら、京の中だったらどこにでも行って良い。

って。



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