夢幻なる絆

□2.高嶺の花
11ページ/20ページ



「なんで帯刀さんあんなに機嫌が悪かったんだろう?お仕事うまく行ってないのかな?」
「アハハ、これじゃ御家老も大変だな」
「?」

独り言のように許可を貰った時の帯刀さんのことが気になって呟けば、西郷さんは豪快に笑い訳の判らないことを言って一人勝手に納得する。

私と言うトラブルメーカーを抱えてるから大変だってこと?
確かにそれは一理ある。
あ、だからさっき帯刀さんはいくら西郷さんと一緒に行くと言っても許してくれず、それでも仕切りに説得したから機嫌悪くなったんだね。
あまりにも私がしつこいもんだから、最後は厄介者を払うようにどうにか許してくれた。
・・・それってつまり私はついに帯刀さんから、愛そう尽かされたってこと?

「西郷さん、どうしよう?私もしかしたら、今日から一文無しの浮浪人なるかも」
「は?」
「私帯刀さんに謝って来ます。許してくれるから分からないけれど、でも私帯刀さんに見離されたらやっぱり生きて行けません」
「いや、そう言う解釈しなくてもいいんだが・・・。と言うかなぜそう言う解釈になる?」

フッと頭の中で横切る大きな不安に堪えられなくなり私はそう言って屋敷に戻ろうとすれば、西郷さんは困った様子で私の腕を掴み急ぐ私を引き止める。

「西郷さん?」
「御家老なら心の広いお方だから、そんな心配しなくても大丈夫。でも凪がそう言うのなら、・・・あれを手土産に、買って帰ろう」
「え、スイカ・・・?」
そう西郷さんが言って何かを指差して私もそれに視線を向けると、その先にはスイカ売りの人がいた。

この時代にはそんなに珍しくない光景。
だけど薩摩藩とスイカ売りって・・・薩英戦争を思い浮かぶよ。

「こう言う日には、やはり西瓜に限ると思わんか?」
「あ、そうですよね。スイカって美味しいから私大好きです」
「凪もか?実は俺も西瓜には目がないんだ」

スイカ好きだと言われているのはどうやら本当のことらしく、私と西郷さんの間でスイカトークに花が咲く。

こう言う時の西郷さんは眼をキラキラさせて、少年のようでちょっと可愛いかも・・・。
年上に失礼だから、これは私だけ心の奥だけに閉まっておこう。

「ならあの中で一番美味しいスイカを選んで、買っていきましょう?」
「ああ、任せろ。俺はそう言うのには、目利きなんだ。お〜いオヤジ。一つくれ」
「毎度あり旦那!!」



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ