夢幻なる絆

□2.高嶺の花
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「もう残暑だって言うのに、今日も暑いな。ねぇ猫ちゃん?」
「ニャン」

今日も相変わらずの暑さに私は縁側で、水を入れた桶に両足を突っ込み涼んでいた。
隣には猫ちゃんが機嫌良く、私の話し相手になってくれている。

猫ちゃん
帯刀さんが名前を付けるのを面倒臭さがって、猫が名前になったらしい。
我輩は猫であるだ。

「海水浴行きたいな。あ、でも水着がないからダメか。じゃぁ加茂川に行ってこようかな。・・・怨霊がいる以上、近くの川は不気味だし」

あまりの暑さに痺れを切らしそんなことを考え、善は急げとばかりに行動へと移し足を拭き、帯刀さんに伝えに部屋まで急いだ。



「駄目」
「私まだ何も言ってないんですが・・・」

元気良く障子を開けた直後、何の脈略もなくばっさりとダメだしをされてしまう。
しかも頭を上げずに、熱心にお仕事中。

私が来たことは足音で分かるとしても、なんでいきなりしかもどうして駄目?
一人で外出はいつものことなのに、どうして今日に限って?
それとも何かをねだられると思っている?

「言わなくても、凪くんの考えはすぐに分かるよ。加茂川に行くと言うんでしょう?」
「うぐ・・・。ならどうして駄目なんですか?」
「そんなことも自分の事なのに分からないの?そんなの川で溺るからに決まってるでしょう」
「・・・・・・・」

物の見事に私の考えと可能性をすべて読まれていて、私はそれ以上何も言えなくなってシュンと小さくなりトボトボと自分の部屋に戻る。

なんでそんなに帯刀さんは、私のことを理解してるんですか?
帯刀さんは私の母親・・・うっ想像しただけで寒気がする。


「お、凪?元気ないみたいだがどうした?」
「あ西郷さん、加茂川に行きたいのに帯刀さんが溺れるから駄目だって言われてしまいました」

途中西郷さんと鉢合い元気のないことを気にしてくれ問われたから、私は情けないと思いつつ正直に理由を話す。

本当に大の大人なのに、川で溺れるって情けない。
でも私に限ってありえる話だから、反論も出来なかった。

「なら俺と行くか?」
「え、良いんですか?」
「ああ。俺も今から涼みに行こうとしてたんだ」
「なら行きます。帯刀さ〜ん」

思ってもいなかった嬉しい突然の申し出に、私の心にパッと光が差し込む。
西郷さんの顔をマジマジと見てもイヤな顔などしていなく本心から言ってくれているのが分かり、私は心を躍らせるんるん気分で再び帯刀さんの部屋まで急ぐ。

西郷さんと一緒ならば、溺れることもないだろうし安全だ。
反対される理由なんてどこにもない。



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