夢幻なる絆

□1.出会い
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「一つ変な事言っても良いですか?」
「なんだい?」
「帯刀さんは自分のような家格の高い者は消えるべきだと言ってましたけれど、帯刀さんは優秀だからそんな若さで家老になったんでしょう?」
「それが?」
「それに今だって実力がある人はちゃんと上に上がって来ます。坂本龍馬とか新選組とか。昔百姓だった人が天下統一した人もいたんですよ。だから身分制度を廃止する目標は良いことだと思いますが、帯刀さんは実力があるんだからそう言う悲しい考えはなくしましょうよ」

今まで言えなかった自分の考えをマシンガンのように、ズバッと伝えてみた。

「・・・凪くんは、私が死んだら悲しいの?」
「当たり前じゃないですか?知っている人が死んだら悲しいし寂しいです」
「私は別に凪くんが死んでも、悲しくも寂しくもないけれど」
「・・・・・」

女性の扱いは得意中の得意な癖して嘘付くことなく、涼しげに本音をバッサリ言われてしまい言葉をなくす。
これにはいくら私でも、少しだけ心が傷つく。

彼女じゃないのは百も承知だったけれど、まさか知人以下でなんにも思われていないなんてね。
私は単なる厄介者なのか?
いずれにしても帯刀さんにとって、私はその程度だとよく分かった。

「わ私、もっと近くで桜を見てきますね」
「あんまり遠くまで行かないようにするんだよ」
「はい、分かりました」

ちょっと虚しさを感じた私は一人だけになりたくて、それだけ言い残し一人境内の奥に入っていく。





「帯刀さんのバカ。私だって女なんだから、少しは優しい言葉を言ってくれたっていいじゃない?なんかムカつく!」

帯刀さんが見えなくなったのを見計らい、なぜか私は虚しさが怒りに変わり愚痴をこぼす。

とにかく不満大爆発だ。

「どうせ私なんて凡人以下で、大先生様には相手にされませんよ。私だってあんな可愛いげのない年下なんか、何も思っていないんだからね。別に死んだって私には関係・・・あるか。私も行き場をなくして死ぬじゃん」

ボロ糞に悪口を言っときながら現実問題に気づき、それ以上悪口を言うのは止めちょうどいい岩に腰掛ける。

帯刀さんムカつく奴だけれど、私にとってはある意味大切な人。
死なれたら困るし、出て行けなんて言われたらもっと困る。

これからも何を言われても、我慢してスルーしよう。


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