夢幻なる絆

□エピローグ
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龍が私達を迎えに来ると言う日。
四神達に言われた通り、私達は京にある神泉苑に来ていた。
私達を見送りにわざわざ来てくれたのは、凪と帯刀と龍馬の三人。

「熊野に帰っても元気でね?」
「うん。凪も元気な赤ちゃんを産んでね?」

いつもの凪と違って懸命に涙をこられえて、そう言いながら私に抱き付く。

私も凪と別れるのは辛いけれど、この数日たくさんの思い出を作ったから大丈夫。
それにいつの日にか私達の子孫に、私のこれからのことを書いた手紙を届けて貰う。
崇と結婚して子供をたくさん産んで、私は幸せだってことを書く。
凪もこれからもっと幸せになるんだろう。

「ヒノエさんも渓も都くんも元気で」
「でもまさか都が渓のことが本当に好きだったとわな?あんなにお嬢一筋で瞬といがみ合ってた奴が」
「・・・良いだろう?別に。こいつが私にベタぼれで、押し切られただけた」
「そうかな?その割には」
「お前は黙ってろ」

     ゴツン

龍馬の言葉に怒りだし更に崇の疑いの目を向ければ、大声を出し崇の頭上にげんこつを入れる。
すごい音がして、崇は頭をおさえ痛そう。

「都の乱暴者。崇、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
「は、なぜ私が悪いんだ?今のは明らかに崇と坂本だろう?」
「?」
「だからなんでそこで首を傾げる?」

都が明らかに悪いはずなのに、意見した私まで怒られ呆れられる。
そう言うところは私にはまだ良くわからない。

「マリアくんは相変わらずだね?でもそれがマリアくんの魅力でもあると思うよ」
「私もそう思うよ。マリアちゃんは無邪気で純粋で心優しい素敵な女の子」

だけど帯刀と凪はそれで良いと笑顔で言い、崇もお兄ちゃんも頷く。

それで良いんだ。

「お迎えがきたようですね?」

朱雀が言った同時に空が光初め、白い龍が現れる。

これが白龍?

「湛渓、マリア、二人ともごめんなさい」
「白龍、反省は後にしろ。今は早く熊野に戻りたい。この二人も一緒に連れていけるか?」

お父さんの言うとおり白龍は反省しているらしく、まずは私達に悲しそうに謝ってくれる。

その時の記憶まったくない私にそれは他人事だけれど、お兄ちゃんはそうではなく殺気が漂い険悪ムードになり、お父さんが間に入らなかったら穏便にはいかないだろう。
お兄ちゃんの気持ちは良くわかる。
全部私のため。
でも

「お兄ちゃん、私は異世界にこられてよかった。崇に出逢えたから。お兄ちゃんだって都に出逢えたでしょ?それにお兄ちゃんがいつだって私を守ってくれたから、私はそんなに辛くはなかった」

それが私の本音。

お兄ちゃんがいなかったら、私はどうなっていたんだろう?
きっと悪い大人達に良いように利用され殺されていたと思う。

「マリア、すまない。小松達の言う通りお前はお前のままでいろ」
「都姉。マリアちゃんはボクの婚約者なんだからね」

急に都の態度が急変しそう言いながら私に抱きつくと、すぐに頬をぷっくら膨らませた崇は私を都から奪い取る。

そんなこと言わなくても誰もが知ってることだからあえて言う必要がないと思う。

「都もようやくマリアの魅力に気づいたか。俺と結婚すればマリアは本当の義妹なるんだぞ?」
「ちょっと渓、何言ってんの?そこまでして今すぐに結婚したいわけ?」
「渓は面白いこと言うよな?」

真っ青になる凪は慌ててお兄ちゃんの台詞を問うのに、龍馬は感心して笑うだけ。
お兄ちゃんの台詞の意味は、前半は良くわかないけれど、後半は本当のこと。
でもそれで結婚したらダメで面白いことなんだろうか?

「マリアちゃん、また勘違いしてるよね?」
「え、勘違い?だってお兄ちゃんと都が結婚したら、私は都の妹でしょ?」
「まぁね?でも結婚はお互いが好きだからであって、妹が目当てでは結婚はしないだろう?」
「しない。都はそうなの?」
「そうじゃないから安心しろ。渓さん変なこと言うなよな」

面白いと言う理由を理解したけれどそれは面白い物ではなく、都に確認するとすぐに否定してくれる。

良かった。

「すまん。悪かった。ならそろそろ行くか」
「そうだね?マリアちゃん、手を繋いでいこう?」
「うん」
「なら俺は」
「え?何やってんだお前?」

崇に言われて指を絡ませ手を繋ぐと、お兄ちゃんはそう言って都をお姫様抱っこする。
顔を真っ赤にしてジタバタする都だけど、そんなに嫌そうじゃなかった。
私は崇を見つめた。

「マリアちゃんもお姫様抱っこして欲しいの?」
「ダメ?」
「ワンワン」
「そんな愛らしい物欲しそうな目で見つめないでよ。コロも鳴かない。するから」
「あり」
「それはまだオレの役目だ。さっさと行くぞ白龍」

恥ずかしそうにもやってくれることになりまずは私がコロを抱っこすると、不満そうなお父さんが割り込んできて私をお姫様抱っこしてくれる。

崇にしてもらいたかったんだけれど、お父さんでも今はいいか。

「凪、帯刀、龍馬、四神達。今まで本当にありがとう」
「ありがとうございます。いろいろお世話になりました」
「私こそ。すごく楽しかったよ。さようなら」
「達者でな」

最後の最後に私とお兄ちゃんはまたお礼を言って、今度こそお別れする。

私達は光に包まれ眩しくて一瞬目を閉じ開けると、同じ場所ではあるけれど景色はまったく違う。

凪達がいた場所が私に似ている大人の女性二人と、お兄ちゃんに似ている男性が一人。
私達を見るなり、喜んだり泣いたり。

「マリア、あの人がお前の母さんだぞ」

とお父さんは一番泣いてこちらやって来る女性を指差し、私を地面に下ろす。

知らない人なのにお父さんと同じで懐かしさ込み上げてきて、何か大切な想い出を思い出しそう。
私とお兄ちゃんの帰りをずーと待ってくれていて、私達子供のことを何よりも大事にしてくれている。

「お母さん、ただいま」
「お帰りマリア。大きくなったね」

自然と言えた言葉にお母さんは嬉しそうに言いながら、私をギュッと抱き締め暖かい何かを感じる。


私が小さい時大好きな温もりだった。




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