夢幻なる絆

□エピローグ
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「男同士の話って、なんだろう?」
「女性には話せない話かな?」
「ふーん」

マリアちゃんの問いに曖昧な答えで誤魔化そうとすると納得がいかないらしく、そんな会つまらさそうな反応が返ってきて話が途絶えた。

これ以上聞いても無駄だと思ったんだろう。

帯刀さんが崇くんを連れて何処かに行ってしまい残された私達は、マリアちゃんが言う思い出作りをするためお菊ちゃんも誘いにいくことにした。
喜市くんも誘いに行ったんだけど、すでにお菊ちゃん所に遊びに行ってるらしい。

「喜市くんとお菊ちゃんと何して遊ぼうか?」
「鬼じゃなくってかくれんぼ。かくれんぼなら転けないよね?」
「・・・・すみません・・・・」

マリアちゃんなりに気を使ってくれて選んでくれたかくれんぼなのに、捻挫した手前肩を落としシュンと小さくなる。
もし同じ事過ちを犯したら、帯刀さんの雷が落ち私は篭の中の鳥。

「凪さん、こんにちは。マリアさん、いつお戻りになったのですか?」
「こんにちは、アーネスト」
「こんにちは。少し前に崇と、戻ってきた」

そんな時アーネストに声をかけられ視線を向けると、複数の桜の苗木を運んでいる。

何をしているのだろうか?

「そうですか?二人とも桜の苗はいりませんか?欲しいだけ差し上げます」
「それは桜の苗なの?お父さんに聞かないと分からない」
「私も帯刀さんに、ん、アーネストと桜?」

外交官のはずのアーネストはいきなり商売(?)を始めるけれど、いくらなんでもそんな大きなものは独断で決められない。
答えに困っている途中、久々に歴女の豆知識を思い出す。
現実よりかはかなり早いけれど、思い出作りには丁度良い。

「凪さん、どうしたのですか?あなたのその笑みは良からぬ事を思い付いたときですよ?」
「失礼な。良い思い出作りを思い付いたの。シロちゃんとクロちゃんは帯刀さんと龍馬に咲ちゃんと南方先生を呼んできて」
『了解』

何か不吉な予感を察知したのか嫌なことを言うアーネストを無視して、二神を呼びみんなを集めてくれるようお願いする。
平和が訪れたても四神との関係は変わらないけれど、最近四神達は単独常道が多くなっている。


「凪?」
「私達は、喜市くんとお菊ちゃんを呼びこ行こうよう。アーネストはウィル先生を呼んで大使館前で待っててね?訳はみんなが集まってから説明するからね」

アーネストに言うだけ言って何か言われる前に、こちらも意味を理解してないマリアちゃんを引き連れ別れる。




「夕凪、どうしたの?みんな忙しいのに呼び出したりして、くだらないことだったらお仕置きするよ」
「くだらないことじゃないです。これからこの参道にみんなで桜の苗を植えるんです」
『・・・・・』

読み通り早い段階で集まりはしたものの帯刀さんの言葉にもめげず胸を張って言うけれど、マリアちゃんとお菊ちゃん以外は呆れきって深い溜め息を付くだけ。
かく言うマリアちゃんとお菊ちゃんはイマイチ理解してないらしく首をかしげる。

そんな釣れない反応されても困ります。

「どうして桜の苗を埋めるの?」
「それは思い出作り。何十年後にこの桜は綺麗に咲き乱れるから、その時今日の日の事を思い出せるでしょ?」
「そうか。私は見られないけれど、遺言に書いて子孫に見てもらう」
「あ、それ良いかも?」

根本的な理由をマリアちゃんに問われ分かりやすく説明すると、少女は目を輝かせ素晴らしい思い付きを言って私のテーションが更に上がる。
男連中の目の色が変わる。

いつの日かマリアちゃん達の子孫と再会出来たら、きっとドラマチックに違えない。
ひょっとしたら私達の子供と恋に落ちる・・・なんてことがあるのかも?

「マリアの提案を含めるとまともになるな」
「ああ。ここが桜並木になったらさぞかし綺麗だろうな」
「まったく夕凪の思い付きは許容範囲外で困ったものだね?後で役人には話をつけておく」
「ありがとうございます」

龍馬の一言余計なのはこの際スルーして、帯刀さんの許可が出たので結果オーライだ。
確かに参道とは言え勝手に苗木を多数植えたらいけないか。

「まぁここは英国の敷地ではないので何も言いませんが、私はすぐ散ってしまう桜など好きじゃないのですよ」
「嘘嘘。本当はすぐに散って落ち込むほど好きなんだよ。私は儚いからこそ美しく咲く桜は風情があって良いと思うんだけどね」

皮肉しかないのか台詞を力説するアーネストだけれど、笑いを堪えたウィル先生の耳打ちに私も笑ってしまう。

そろそろ日本が大嫌いと言うのを辞めて、素直に認めたら良いのに。

「ねぇアーネストは日本人に酷い事されたから、日本が大嫌いになったんだよね?」
「ええそうですよ」
「それは今も?私達と交流していても、日本人は嫌いなの?」
「・・・・・・。私はあなた達のことはベストフレンドだと思ってます。そう考えたら・・・・・・」

顔を真っ赤に染まらせ小声ではあるけれど、意外なほど素直な答えが返ってくる。
こう言う時のアーネストは可愛くてもう少し構いたいけれど仕返しされそうだし、何より帯刀さんの嫉妬が怖いから切り上げよう。

「じゃあ、早速植えようか?」
「うん、まず穴を掘るんでしょ?」
「そうだね」
「そう言うことは俺達に任せろ」
「だな。崇も手伝え」
「そうなるよね。うん、わかった」

話をそらせるのに成功させ、男達はやたらに張り切り野良仕事を開始。
結構楽しんでいるように見え思い出作りは順調だと確信するが、帯刀さんだけが戸惑った表情を浮かべ私を見つめている。
帯刀さんの事だから、野良仕事なんて無縁な生活だったんだろうな。
見た感じやりたくないって風には見えないから、教えながら一緒にやろう。

「帯刀さんは私達と一緒に植える準備をしましょう?」
「お姉ちゃんお姉ちゃん、植える時は根っこをほぐすと良いんだって」
「お菊ちゃん、よく知ってるね」
「母ちゃんに教えてもらったんだ」
「ならそれは夕凪には任せられないね」
「え、なんで?」

私達も楽しくやろうと思いまずはその作業をやろうとしたら、なぜか帯刀さんに苗木を奪われやり始める。
あまりのことにぽかんと帯刀さんを見つめてしまう。

私には任せられない?

「だってそうでしょ?夕凪は加減が苦手な上、雑。根っこを傷つけたら大変だよ?」
「またそれですか?そんな事ばかり言ってたら、これから始まる子育てはどうするんですか?」

理由は毎度毎度の心配のしすぎで、いい加減聞き飽きてうんざりげに言い返す。
確かに普段は雑ではあるけれど、司書の仕事だってそれなりにこなせていた。

・・・たまにドジを踏んでたけど。
でも子育てを他人に任したくない。

「確かに子育てを梅にすべて任すわけにはいかないね?それならやってみなさい」

さすがの帯刀さんもそれは考えてないらしく、別の苗を私に差し出す。
ここで失敗したら私は出産したら子供を取り上げられるだろう。
変なプレッシャーに追い込まれる。

「凪ちゃんゆっくり落ち着いてやれば大丈夫」
「うん」

咲ちゃんが応援してくれ、言われた通りゆっくり落ち着いて根っこをほぐしていく。





「楽しかったね?」
「おいら達が大人になる頃には、この桜が綺麗に咲き乱れるのか」
「だね?江戸にいる人達でお世話していこうね?」
『はーい』

苗木をすべて無事に植え終わり達成感で満たされる私達。

でも植えただけでは綺麗な桜は咲かなくて、地道なお世話が必要だ。

「さぁ一仕事終わったことだし、大人達は酒呑みに行くか? 」
「龍馬さんは相変わらずですね?では我々がディナーに招待します」
「それグッドアイデアだね?もちろん君達も」
「え、あたい達も良いの?やった」

言うと思った龍馬のお粗末な誘いがアーネストによって素敵なものに代わり、更にウィル先生の粋な計らいで全員参加となった。
思いがけない招待に喜市くんとお菊ちゃんは無邪気に喜び、私も久しぶりの英国主催のディナーだから楽しみだ。



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