夢幻なる絆

□エピローグ
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黒麒麟を封印したことにより江戸に平和が訪れた。

よくあるモノローグの出だしであって、実際怨霊は激減したのだから嘘ではない。
だけど私の日常は特に何も変わらず・・・変わったと言えば徐々に大きくなっていくお腹に幸せを感じている。

帯刀さんなんか前より過保護になり後少ししたらきっと一人外出禁止になるのだろう。
確かに最近動きにくくはなっているけれど、世の中の妊婦は臨月でも一人外出は当たり前だ。

「帯刀さんと二人だけで外出するのは久しぶりですよね?」
「そうだね。最近は色々忙しかったから、構ってあげられなくてすまなかった」

半月ぶりぐらいの帯刀さんがお休みと言うことなので、手を繋いで仲良く浅草の町をお散歩。

特に目的地もなく本当の意味でのお散歩だけれど、私は帯刀さんとならどこでも良いんだよね?
家でゴロゴロしていても幸せである。

「安心して下さい。私の旦那様は優秀な人だって理解していますから、そんなことぐらいで拗ねたりはしません」
「そう?その割には私の帰りが午前様だと機嫌が悪くなるじゃない」
「そそれは仕事と言うより宴だから・・・。それに帯刀さんがいないと・・・」

物わかりの良い妻を演じればすぐに揚げ足をとられ、思わず本音まで漏らしてしまう。

もちろん宴も仕事だって言うことは分かってはいるんだけれど、帯刀さんの温もりがあまりにも心地良いからないとどうしても眠れない。
シロちゃんを抱いても効果がない。
でもそんなこと言ったら帯刀さんが困るだけで、明らかにそれは私の完全なわがまま。

「まったく私の妻は甘えん坊で困る。そんな可愛いこと言われたら遅く帰れなくなるでしょ?私だって出来ることなら、こうして妻の温もりを四六時中感じていたい」
「帯刀さん?」

案の定帯刀さんは困ったかと思いきや意外にも変なボタンを押してしまったようで、裏路地に連れていかれ強く抱きしめられ首筋に暖かくて吸い取るような刺激を感じる。

私そうやらると、弱い・・・。
・・・でもここは裏路地。

「これからはなるべく宴は断るようにする。断れなくても午前様にならないよう精進する。夕凪、愛してる」

どうにか理性を保とうと努力しているのに、帯刀さんはそれを許さず今度は口をふさぐ。
帯刀さんが今すぐほしい。

「私も帯刀さんのことが、世界で一番愛してます」
「どうやら散歩などしている場合ではないらしい」
「え、あはい・・・」

帯刀さんもこの先を望んでいて散歩はここで中断。

まだ日が高いって言うのに、私達は何をしているんだろうか?

そんなことなら毎晩のようにしているのに、それでもまだ物足りない。
帯刀さんがここまで私を愛してくれるのは未だに信じられないけれど、これが紛れもない現実なんだから素直に信じよう。

「あ、今お腹を蹴った」

突然感じるお腹の優しい痛みを感じ報告しながら、帯刀さんの手を掴みお腹にあてる。

この子はやっぱり私似らしく元気いっぱいで頻繁に蹴られ、幸せを感じていた。
すくすくと成長している何よりの証。

「あ、本当だ。両親が仲良くしてるのが嬉しいんじゃない?」
「ですね?」
「だとしたらもっと」

帯刀さんにも伝わりなんとも優しい笑顔を見せてくれ。再び口はふさがれ・・・

「ね、凪と帯刀は仲良しでしょ?」
「ね。じゃないよ?こう言う馬鹿夫婦は、見て見ぬふりをするのが常識だろう?」
「そう言えばお兄ちゃんが空気を読みなさいと言ってた」

良く聞く無邪気な声は何度となく目撃しても暖かく見守られているけれど、もう一つの声はまとまなことを言ってしかも弱冠引きぎみ。

私達の株は大暴落。
でもその二つの声がこっちに来るのは後三日後のはずなのに、なぜ今ここにしかも見られたくない現場を目撃されてる?

「マリアくん、崇、君達がどうしてここにいるの?」

私の疑問は帯刀さんも驚き、私を離し問う。

間違えであって欲しいと思っても、やっぱりそれはなかったらしく声の主はマリアちゃんと崇くんだった。
崇くんの姿もこちらの世界に合わせて、着物になっている。

「凪との思い出をもっと作りたかったから、崇に頼んで先に戻ってきた」
「うん、そうだね。私もそうだよ」

マリアちゃんらしい可愛い理由に胸の奥が暖かくなり、そう言いながらマリアちゃんに視線を合わせ頭をなぜる。

私もこのままマリアちゃんとお別れは淋しいと思っていたものの、マリアちゃん達にだっていろいろ事情があるんだろうから我慢していた。
だから本当に嬉しい。

「まったく。すっかり熱は覚めてしまったよ。散歩の続きをしよう」
「ですね?」
「・・・その交わし夜はすごいから覚悟しときなさい」
「・・・・」

確かにこの状況で熱が覚めてしまいそう言ってくれるのは助かるけれど、その辺は帯刀さんで今夜は長くなると覚悟する。

帯刀さんの本気は先日味わい想像以上に体力を消耗して午前中は怠かったけれど、心は満たされ帯刀さんを今以上に感じることが出来て癖になりそうだった。

強引過ぎる帯刀さんも好き。
結局私はどうしようもないどSだったと自覚するしかない。

「すみません。所で帯刀さん後で男同士の話をしても良いでしょうか?」
「良いよ。家族になる渓には話せないこともあるからね」
「まぁ・・・」

この会話で内容が大体察しが付き、向こうの世界でどれだけ進展したのか非常に気になる所。
私達もその間女同士の話をしよう。

「凪お腹大きくなったね? ここにあかちゃんがいる?」
「そうだよ。触ってみる?」
「うん。女の子?男の子?」

おっかなびっくりお腹を優しく触るマリアちゃんは嬉しそうに聞いてくる。
まるで幼い我が子がお母さんのお腹をさわり、妹か弟かを待ち望んでいるかのように。

「それは生まれるまでのお楽しみ」

この時代には性別を知るよしもないから、生まれるまでのお楽しみが常識。
でも私と帯刀さんは勝手に女の子だと思っている。
だって私達が見る夢には決まって可愛い女の赤ちゃんだから。
もちろん男の子でも大歓迎。
女の子も男の子も両方ほしい。

「元気に生まれてくるんだよ」
「ありがとうマリアちゃん」
「ねぇ崇?」
「え、何?悪い予感しかしないけど」

突然何かを閃いたらしく目を輝かせ崇くんの名を呼ぶから、崇くんは顔を青ざめ独り言のように呟く。
私もまた似た想像をしてしまい帯刀さんを見つめ助けを求める。

赤ちゃんが欲しいとか言い出したりしたらどうしよう?
流石にそれはまだ早いと思うし、何よりヒノエさんがこわい。

「私お姉ちゃんになりたい」

しかしマリアちゃんの願いは、私達の予想を裏切り可愛らしいものだった。

お姉ちゃんになりたい

か。

私も弟が出来たときは喜んだらしい。

「それならヒノエさんに頼みなさい」
「そうか。分かった」

クスクス笑いながら帯刀さんは適切なアドバイスをすれば、マリアちゃんは理解したのか無邪気な笑顔を浮かべ期待するのだった。

しかしそれは難しかったりするんじゃ?




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