夢幻なる絆

□15.遙かなる時空の中で
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「アニー、お客さんですよ」
「私にですか?」

英国大使館につきアニーの部屋の前で待たされ、一人入ったウィル先生は白々しくそれだけ伝える。
不思議そうに声をだすアーネストは疑いはせずドアが開き姿を見せるけど、 私の顔を見るなり顔を青ざめすぐに閉まる。
分かりやすくても、ショックな反応。

「一体どう言うことですか?」
「いつまでも塞ぎ混んでいるのはいろいろよろしくないからね?荒治療しようと思って、Mrs.凪に無理矢理来てもらったよ」
「相変わらず君は強引ですね?友人の失恋を面白がってません?」
「まさか。僕はアニーのためにしてるんだよ。感謝して欲しいぐらいだ」

アーネストの怒りが徐々に失っていくのがよく分かる会話が繰り広げられ、いつもなら笑える展開なのに今はまったく笑えない。

ウィル先生って結構毒舌だよね?
こうなったら焼け糞だ。

「アーネスト、私は帯刀さんを何よりも愛して尊敬もしているの。だからごめんなさい。さようなら」
「さようならじゃないでしょ?ちゃんと返答を待って下さい」

私としてはちゃんと振れたのでさっさと帰ろうとしたら、今度は渓に首を横に降られ引き留められる。

なんで返答を待たないといけない?
それってあまりにも残酷な事なんじゃ?

「これで本当にこの気持ちに終止符を付けられます。・・・だから今後も友人の一人としてくれませんか?」
「え、あそれはもちろん」

しかしそれは良かったことのようでアーネストはいつものアーネストに戻り、梅さんが言ってたのとは正反対のことを言って手を差し伸べられる。
私としては望んでいたことだったので、すぐにその手を掴み取り喜ぶ。

「Mrs.凪、これからもアニーと仲良くしてあげて下さい。もちろん私とも」
「はい。こちらこそよろしく」

ウィル先生もホッと安心したのか表情がほころび笑顔でそうお願いされて、そのつもりだったから快く二つ返事をする。
毒舌でもウィル先生は一番アーネストのことを心配してくれている。
友達思いと言うか弟思い。

「アーネスト、ウィル先生を大切にしないと駄目だからね」
「分かってます。本当にウィルには迷惑を掛けましたし、咲さんにもいろいろ相談を乗ってもらいました」
「え、咲ちゃんにも?」

流石に今日は素直で知らない真実を知らされ、これには驚き聞き返してしまう。
確かにこの件は咲ちゃんに任せるような流れになっていたけれど、本当に話して力になってくれていたなんてありがたい。
後でお礼を言おう。

「ええ。彼女は私の同志です」
「そうなんだ」

日本人嫌いにも関わらず、すっかり咲ちゃんには心開いている様子。嫌みを言われず断言されるので、今日の所は詮索するのは止めた。
失恋相手に新しい恋の話はいくらなんでもご法度なんだろうと思う。
何がともあれこれで問題はすべて解決。
時計を見ると三時でまだ時間の余裕があるけれど、ヒノエさんの手伝いがあるからそろそろ帰ろう。

「それじゃ私は帰るね?」
「あ、凪さんと渓も一緒にゆき達の所に着いてきてくれませんか?今までの無礼を謝ろうと思うのですが、お恥ずかしながら一人で行くのは心細いのです」
「もうしょうがないな。良いよ。一緒に行ってあげる 渓はどうする?」
「俺も都に話があるので、一緒に行きます」

アーネストは頬を赤く染め可愛らしい理由を言った上で頼むので、思わず笑ってしまい事情も分かるから引き受けた。
渓にも聞けば、快く頷いてくれる。

都に話があると言うことは、まさかまさかの展開になる?
そりゃそうだよね?
もうすぐすべての決着が付くから、二人の行く末も決めないといけない時期。
二人の関係は未だに謎だけれど、少なくても良い感じなんだろう。
しかし渓の本性を知ってしまったため、正直都が心配で危険さえ感じてしまう。


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