夢幻なる絆

□15.遙かなる時空の中で
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「事情は良くわかりました。凪さんには日頃からお世話になっていますので、お供と助言はします」
「うん。それだけでも十分です」

大使館に無理矢理連れていかれる途中、天の助けなのか渓を見つけ迷うことなく巻き込むことにした。

必死に事情を詳しく話したら分かってくれて快く頷いてくれたのに、どこかトゲのある言い方にも聞こえたのは気のせいなのだろうか?
しかし今は何よりも付き添いが重要なので、その辺は深くは考えないようにする。
それにすべてを任せて私は傍観者というわけにも行かず、あくまでも私が振らないと意味がない。
そのぐらいはちゃんと分かっている。

「良かったですね?Mrs.凪」
「はい。これで頑張れると思います」
「それは良かった。では急ぎましょう?」

少しだけ前向きになる私にウィル先生は喜んでくれるけれど、更に急ぐように言われそれにはため息をつく。
いくら前向きになれても心の準備と言うものがまだ出来てないから、そんなに急かされても良いものにはならない。

「凪さん、帯刀さんの愛を語れば良いと思いますよ。絶対に好きになってありがとうとは言ってはいけません」
「そうなんだ。渓は振られたことがあるの?」

早速助言してくれる。
しかし穏便に振るのは上等手段と思いきや、止められてしまい身動きが取れなくなる。

帯刀さんへの愛なら語れないほどあるから大丈夫だけど、そんなこと言ったら火に油を注ぐって言うか傷に塩を塗る?

「そりゃありますよ。初恋相手には弟にしか見られないって言われました」
「物の見事にバッサリ振られたね?」
「まぁ今考えれば、十六歳の彼女にしてみれば九歳の小僧なんて相手にするはずがないですからね」
「・・・」

渓が振られるなんて意外だと思ったのも束の間、振られて当然の理由に圧倒されてしまう。

高一と小三。
絶対にないな。

その辺詳しく聞きたい気もするけれど、今はそう言う場合ではないことぐらい分かっている。

「渓はませた子供だったのですね?」
「ですかね?俺が告白したのはそれだけで、あとは来るもの拒まずで軽い付き合いをしてます」
「さすが渓さん。夜道に襲われないように気を付けて下さい」

軽すぎで女好きの最低男の回答に軽蔑と呆れるしかなく、嫌味混じりで身の危険を心配するそぶりを見せる。

きっと軽い付き合いと言うぐらいだから、股がけなんて当たり前なんだろう?
ガールフレンドが沢山いても、浮気にはならないと思っている。

ウィル先生もこればかりは呆れて苦笑。

「俺がそんなへまをすると思いますか?」
「しませんね?」

なのに胸を張って自信ありげに答える渓に、本気で殺意が沸き一度ぐらいは女性で痛い目に遭ってもらいたい。
ここにマリアちゃんがいたら、絶対に泣きながら更生させるに違いない。



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