夢幻なる絆

□15.遙かなる時空の中で
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「おやこれはMrs.凪ではありませんか?」
「あ、ウィル先生こんにちは。仁友堂に用事ですか?」
「はい。明日の手術の打ち合わせだったんです」
「日英の交流をどんどん深めて下さい。それよりウィル先生は一人で行動するんですね?」

天気が良いのでお菊ちゃんちに遊びに行こうと屋敷を出ると、ウィル先生と鉢合わせになり笑顔で挨拶を交わす。パッと誰かいないかと辺りを見回してもウィル先生一人だけ。

「私は日本語がペラペラですからね?でもまぁ本当はアニーに振られたのもありますが」
「あ、それってきっと私のせいだよね?」

ウィル先生は明るく答えてくれたけれど、少し考えれば分かる聞いてはいけないことだった。
いつものように言ってから大きな後悔をして、その後の言葉を返すも気が重い。
アーネストは当然私と顔を合わせたくない。
私だってまだ顔を合わせたくない・・・。
私の事だから今あっても、予想外の事をやらかすに決まっている。

「ですね?あなたがアニーをちゃんと振らないから、アニーは立ち直れないんですよ。だから今すぐにこれ以上もないぐらいに振りなさい」
「・・・え、あちょっと」

凹む私にウィル先生は真顔で私を叱り、腕を強く捕まれ強制連行される。
台詞からして私の意思に関係なく、英国大使館に連れていかれるのだろう。
これ以上もないぐらいに振ると言われても、今ならこの前のように何も言えず逃げてしまいそう。そしたらアーネストは今より更に傷つけて・・・。

そもそもこれ以上もないぐらいに振るって、私にそんな権利があるの?
なんで結婚後にモテ期が来る?
頭がパニック寸前だ。

「私はお世辞とか同情と言う言葉は嫌いなので、もし傷つけてしまうことを言ってしまったのなら失礼。ですがアニーは今まで一度振られたことがないのです。なのでアニーを大人の男性にして下さい」

言い方はキツいけれども、アーネストを大切に思っている事はよく分かった。
だから悪気がなく謝れるのはいい気分ではないけれど、英国人はそれが普通だと思えばスルーできる。
しかし一度も振られたことかないなんて、さすがアーネストと言う所か?

「それますます私なんかに振られたら可愛そうじゃないかな?って言うか私のどこを好きになったの?」

悲しいぐらいに自分に自信がなく、帯刀さんにも言える問い。

「アニーの周囲にはいなかった魅了あるタイプだからだと思いますよ。素でいられて楽だといつも楽しそうに話してくれてました」
「それって完全に下に見られてるだけじゃないの?アーネストはストレス解消グッズが欲しいだけ?変わり者なの?」
「そうではないと思いますよ。本当にMrs.凪は面白い女性ですね?」
「・・・・」

あまりの馬鹿丸出しの問いに困り果てるかと思いきや、なぜか豪快に笑われて私が言葉をなくす。

まさかウィル先生にまで気に入られて・・・

「Mrs.凪安心して下さい。私には最愛の彼女がいますから」
「そうなんだ。それなら良かった。なら私はこれで」

流石にそこまでモテ期だと思うのは自信過剰らしく、ウィル先生の恋愛事情を聞くことになる。
最愛の彼女と言うぐらいだから、ラブラブなんだろう。

日本にいたら会ってみたいな。

「Mrs.凪。どこへ行くのでしょうか?逃げないで下さい」
「うっ・・・」

流れに任せ逃げられると思い別れを切り出し去ろうとしたけれど、そう簡単には行かず再
び腕を強く握られ振り出しに戻る。

この運命からは逃れられない?



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