夢幻なる絆

□15.遙かなる時空の中で
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「こんなもんで良いか。みんなも人の姿になってお茶会に出席する?」
「宜しいのですか?」
「大歓迎ですよ」
「ならお言葉に甘えて参加しよう。人の姿だと凪を口説きやすい」
「白虎・・・。いつか帯刀に殺されるぞ」

野点の準備が整い私の思い付きがいけなかったのか宮ちゃんは喜んでくれるけれど、シロちゃんの言葉にアオちゃんだけではなく私も笑顔がひきつる。
毎度毎度の事ながら、シロちゃんも懲りないな。

「私はこの姿であれば凪が喜んでくれる。お茶の時は凪の隣に座ってよいか?」

とクロちゃんはいち早く人の姿になり、可愛らしくおねだり。
これには弱いけれど、軽はずみなことは言えない。
人の姿が私のお気に入りだと学んだクロちゃんは、度々この姿になり甘えてスキンシップが多くなっている。しかももちろん帯刀さんが政務に行っている時だけ。
私は馬鹿だからそんなクロちゃんの行為を受け入れてしまっている・・・。

「凪ちゃんは、玄武が好みなのでしょうか?」
「クロちゃんは可愛いから、弟にしたいだけ」
「弟でも凪に愛されれば、私は満足なのだ」
「そうなのですか?確かに玄武はこの中で一番愛らしい姿をしてますね?私は朱雀が・・・」

誤解されないように真実を即答すると、クロちゃんはそう言いながら私に抱きつく。
おかげで誤解はすぐに解かれるけれど、シュウちゃんを見てほほを赤らめる。初々しくて可愛らしい。
宮ちゃんのタイプってシュウちゃんなんだ。
優しそうで落ち着いた雰囲気がどこか将軍様に似ているとは思う。つまり将軍様も宮ちゃんのタイプで一件めでたしめでたし何だろうけれど、こんなこと将軍様嫌帯刀さんに知られたらきっと私に特大の雷が落ちる。
天下の将軍様の正妻が他の男にうつつを抜かしている。そんな噂が立てば大事になってしまう。

「だけど宮ちゃんの一番は将軍様でしょ?」
「はいそれはもちろんです。朱雀は歌舞伎役者の好きと同じです」
「だ、だよね?」

最悪自体は免れ私のいらぬ心配事だったようで、当たり前のように答えてくれる宮ちゃんにホッとする。
ファンって事だったら、きっと大丈夫。




「奥方様、凪様、藤原さんを連れて参りました」
「はい、ご苦労様です」

そこへピンクの振り袖姿のマリアちゃんを連れた女房がやってきて、速やかにそう伝えすぐにその場を去る。

「和宮様初めまして。藤原マリアと申します。本日はお招きありがとうございます」
「マリアさん、初めまして。私のことは気軽に宮ちゃんと呼んで下さい」
「分かりました。なら私のことはマリアで良いです」

怖い物なしで素直なマリアちゃんらしく、宮ちゃんのお願いを快く了解する。以前咲ちゃんと南方先生には丁重に断られ悲しんでいたこともあり、今回はとても嬉しそうに笑顔いっぱいになる。
マリアちゃんとは歳が近いから仲良く・・・もうすぐ元の時空に戻るんだからあんまり仲良くなっても困るか。別れは辛いもんね。
それにしても礼儀作法は完璧なのに丁寧語はどことなくぎこちないのも、マリアちゃんらしくて微笑ましい。
そう言えば昨日渓とヒノエさんと練習してたっけぇ?

「はい、分かりました。今日は良い天気で暖かいですし、賑やかで楽しい野点になりそうですね?」
「ええ」



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