夢幻なる絆

□15.遙かなる時空の中で
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「異世界へ行く前に凪と帯刀を家に戻してもよろしいでしょうか?」
「そうだな。本来ならば帯刀も南方先生の治療を受けた方が良いんだが、神子姫様と瞬のことで手一杯だしな」
「ええ。咲達に診てもらうのが一番良いと思ったのです」
「おお、その手があったか」

朱雀の頭の機転の早さには、俺だけではなく玄武もやたらに感心する。

そこまで頭が回らなかった。
しかし青龍と白虎は浮かない表情に変わりため息混じりで肩を落とす。
まさかこの二神・・・それだけはないか。

「お兄ちゃん、お父さん」

そこにどこか不安げなマリアが、宮様につれられやって来る。

何かあったのだろうか?

「どうかしたか?」
「ゆきと崇のお兄ちゃんは大丈夫?」
「心配なのか?」
「うん・・・。ゆきとは和解して友達になって、崇のお兄ちゃんは嫌いだけど、本当のお兄ちゃんだから・・・死んだら崇が悲しむ」

心配しなくても自分のことではなくゆきと瞬の心配。
友達になったゆきはともかく瞬の心配をするのは驚きではあったが、確かにいくら嫌っていても崇だって瞬が死んだら悲しむだろう。
すべてを滅ぼそうとしたと言えども、今となっては状況は変わっているから。

「南方先生が手術をしてるんだ。心配しなくても大丈夫だ」
「そうだね。仁は名医だから、きっと治してくれる」
「ああ。俺達はこれから凪さんと帯刀さんを家に帰し、燭龍を倒しに行く」
「うん」

俺だけではなくマリアも南方先生には信頼を持っているため、疑うことなく表情が和らぎ安心したようだ。
そして燭龍を倒しに行くことも恐れることなく力強く頷く。

それは俺が言ったからなのか自分でもそう思っているのかは分からないが、少し前よりマリアは自分を主張し始めている。
まだまだ子供の考えで、時たま周囲を驚かせているが。

「だったら私も行かせてくれ」
「都? お前は白龍の神子の傍にいてやれよ」

都までもがやって来て迷いない瞳でオレを見つめそう頼むが、俺は首を横に振りそれを却下する。

マリアがいる以上俺は都を護れる保証はない。
プロポーズした癖に優先順位はマリアの次だと言う最低な奴だ。
これだけはマリアのために起こした事だから、最後までマリアを護ると誓っている。

「ゆきなら南方先生に任せておけば大丈夫だ。それから瞬も。それより渓さん達の方が心配だから、私の力も貸してやると言ってるんだ」

さっきまで泣いていた女が言う台詞ではないが、いかにも都らしい。
都の事だから、俺の最優先はマリアだと知っている。
それでも良いと思って

「さすが湛渓の選んだ女は肝が座ってるな。マリアはオレと崇で護るから、お前は未来の嫁を護りな」
「は、わ私は嫁にも彼女にもなった覚えはない。護ってもらわなくても結構だ」
「顔を真っ赤で動揺しながら言われてもな。な、マリア?」
「うん。 都、自分に正直にならないと駄目だよ」

父上とマリアの相変わらずのこの下りに、都は諦めたのか頭を抑えため息をつくのだった。



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