夢幻なる絆

□15.遙かなる時空の中で
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「なんだか、怖いですね?」
「もし何かあったら私が凪と宮ちゃんを護ります」
「マリアちゃん、ありがとう。だけどこう言う時はみんなを信じて待つんだよ」
「うん。分かった。信じて待ってる」
「そうですね」

約束通り私はマリアちゃんとそれから心配で様子を見に来てくれた宮ちゃんと三人で待っている中、普通の人らしく不安に思う宮ちゃんを私とマリアちゃんで明るく励ます。
きっとマリアちゃんは渓から何かあったら二人を護るように言われたんだろうけれど、何もないって信じているからそう言えばマリアちゃんはにっこり笑い頷く。
マリアちゃんも本当は渓やヒノエさんを信じてるんだと思う。

「じゃぁみんなが戻ってくるまで、何してようか?」
「必勝祈願で、千羽鶴を折る?」
「うっ・・・」
「千羽鶴とはなんですか?」

第三者が入れば無事を祈って大人しく待ってろよと突っ込まれそうだけど退屈なあまり寝てしまったら怖いので、話を切り出せばごもっともな優等生の解答が返ってくる。
必勝祈願は確かに大切。
しかし不器用な私には千羽鶴なんて難関なもので反射的に拒否反応を起こすと、初耳なんだろう宮ちゃんは目を輝かせ興味津々とばかりに問い返す。

「折り紙で鶴を千羽折って繋げる物。知らない?」
「マリアちゃん、千羽鶴は戦後に出来たものなんだよ」
「そうか」
「ですが折り鶴は知ってます。折り紙を持って・・・さすがに千枚は」
「あ・・・」

自然の流れで千羽鶴を折ることになりつつあったけれど、千枚も折り紙があるわけなく断念するしかなくなる。
そりゃいくらなんでも千枚すぐに用意できるはずがない。
しかしマリアちゃんはショックなのか悲しそうな表情になる。
そうされるとお姉さんは弱いんです。

「なら折れるだけ折ろうよ。千羽鶴なんて要は心を込めて鶴を折るもんだから、数はそんな重要じゃないでしょ?」
「そうですよね?でしたら女房にあるだけ持ってきてもらいますね?」

自分でも思う説得力があるそれっぽい事を言って、同意をした宮ちゃんは準備を始めた。
しかし千羽折るから祈りが通じると言われたら、それもまた説得力はある。






「これで全部ですかね?」
「うん。後は糸で繋げるだけ」

あるだけの折り紙をすべて折りきりもはや槍尽くした感じでぐったりする私とは違い、マリアちゃんと宮ちゃんはケロっとしていて楽しげに次の行程に移っていた。
恐るべし10代コンビ。

「凪ちゃん、大丈夫ですか?少し顔色が悪いですよ」
「え、そうかな?久し振りに神経使っただけだから疲れているだけだよ」
「だったら凪。横になってて」

そんな私と目が合った宮ちゃんは私の顔を除き込み心配してくれ、マリアちゃんも慌てて自分の座布団を丸め枕を用意してくれる。

そこまで私の顔色は悪いんだろうか?
だとしたら本当に横にならないと、胎児にもよくない。
みんなが戦っているとこ悪いけれど・・・?

「そう言えば帯刀さん達、少し遅くない?」

フッと感じた途端、胸騒ぎがしてきて不安も押し寄せる。

ボス戦だから時間が掛かって何もないって信じてはいるけれど、もし帯刀さんの身に何かあったらどうしたらいいの?
だけど私が様子を見に行ったりしたら、余計ややっこしくなる可能性の方が高い。
だから私は・・・。

渡り廊下から帯刀さんの足音が段々近づいてくる。



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