夢幻なる絆

□15.遙かなる時空の中で
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数日が過ぎ今日は待ちに待った宮ちゃん主催の野点の日。

私は予定通り早く宮ちゃんと会うことを約束して、今ではお決まりの十二単を着て江戸城に足を運ぶ。
まだお腹は目立ってない物の、お腹回りは緩くしてもらっているからだいぶ楽だ。

「凪さん、いらっしゃい。お体の方はよろしいですか?」
「はい。もう安定期に入ったから平気です。お腹が大きくなったら、動くのが大変らしいですが」
「そうなのですか?私も家茂公のお子を授かると思いますので、その時は是非相談に乗って下さいね」
「もちろんです。あ、数ヵ月以内で授かれば同い年になりますね」

人妻だから子供のことは気になるようで妊娠の内容に興味津々。
だけど私の軽はずみで軽率な言葉に、宮ちゃんの顔が真っ赤に染まり恥ずかしそうに下を向いてしまった。

「あ、すみません。私また余計なことを言ってしまいました。急かせ過ぎですよね?」
「いいえ、そう言うことはありません。ただ私達にはもう少し時間が必要なのだと思います」
「ゆっくり焦らずで良いんですよ。私の時も時間は掛かりましたからね?」

自分が墓穴を掘った癖して、自らフォローして笑ってごまかす。
こう言うデリケートなことは気軽に言ったらいけないし、将軍の子供なら跡取りとして男の子を望んでいる。
すでに周囲から変なプレッシャーを掛けられてると思うのに、私まで何をバカなことを楽しげに言ってしまったんだろう?

「そうなのですか?相思相愛でもそこまで行くのには、やはり時間がかかるものなのですね」
「実は話したいことはそのことなのですが、私は未来と今を行き交うことが出来るんです。こっちでたまたま帯刀さんに拾われ、お互い引かれ合い結婚し今があります」
「物語のようで、素敵です」

話の流れ的に最高のタイミングが訪れて逃すことなく龍馬達に言っている事情を話せば、宮ちゃんはなぜか驚くことなく笑顔で感想を言う。
これには私の方が驚いてしまい開いた口が塞がらない。
どういうこと?

「驚かないんですか?」
「ええ。だって龍神の神子は異なる世界の人らしいので、四神の神子である凪さんも当然そうではないかと思ってました」
「そう考えるとそうですね」
「でも直接教えてくれてありがとうございます。とても嬉しいです」

言われて私が四神の神子だとわかった時点、その可能性が高くなることに気づく。
ひょっとしたら薩摩藩の中でも、私の素性をまだ疑っている人もいるのかも?
ただ西郷さんの遠縁になっているから、それを疑っているなんて恐れ多くて言えない。
かって私を批評したら、帯刀さんの逆鱗に触れて左遷された武士がいるんのだから。

「私もちゃんと話せて良かったです。宮ちゃんは私の大切な友人だから、話しておきたかったんです」
「私が凪さんの大切な友・・・嬉しいです」
「え、宮ちゃん、なんでそこで泣くんですか?」
「だってそんなこと言われたの初めてなんです。友人と言ってくれるだけでも嬉しかったのに」

何気なく言った言葉に宮ちゃんは大粒の涙を流してしまい、慌ててハンカチを取り出し渡す。
宮ちゃんは結構涙もろい。
こんなに喜んでもらえると、こうして打ち明けて良かったと思う。
私も嬉しい。

「そんなわけで宮ちゃん。お願いがあるんですけど」
「はい、なんでしょ?」
「これからは私のことを凪ちゃんって、呼んでくれると嬉しいです」
「はい、喜んで」

結構勇気のいるお願いだったはずなのに、あっさりと承認され拍子抜けする。
どこか居酒屋店員のノリのようにも思えたけれど、まぁ気のせいにしておこう。
そう言えば風花記のラスボスって江戸城にいたんだよね?
だとしたら今も奴はどこかに潜んでいて、時が来るまで力を蓄えているとか?
そしたらこちらから仕掛けて一斉攻撃をすれば、不意打ちだからあっさり勝てたりして?

「ねぇ宮ちゃん。この江戸城内で心霊現象が多発しているなんてことありますか?」
「いいえ。でも綱吉様なら何か知っているかも知れません」
「あっ、そうだね。じゃぁ後で聞いてみよう」

一つの可能性を閃きそれには居場所を知る必要があったため宮ちゃんに聞いてみると、求めていた答えはなかった物の手がかりは見つかった。
将軍様なら江戸城の主なんだろうから、もし何かあれば耳に入っている可能性はある。
でも些細なことなら隠されるんだろうか?

「もしかして四神の神子のお役目なのでしょうか?」
「四神の神子と言うより龍神の神子と八葉の役目かも知れませんが、四神の神子は龍神の神子の補佐みたいな所もありますからね」
「そうなんですか、頑張って下さい。もし私にも手伝えることがあればなんでも言って下さい」
「はい。その時はよろしくお願い致します」

嬉しそうに自ら進んで協力をしてくれる宮ちゃん。
さすがにバッグが怖いから危ないことはさせられないけれど、それでも強力な協力者には違えない。


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