夢幻なる絆

□15.遙かなる時空の中で
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「凪、折り入って相談があるんだが」
「相談?改まってなんですか?」

夕食の片付け中随分かしこまったヒノエさんに声をかけられ、私は不思議に思い首を傾げる。
マリアちゃんのこともあり夕食中もずーと塞ぎ混んでいて、私に出来ることがあれば力になりたいとは思っていた。
でもマリアちゃんの恋愛は応援しているから、妨害はしたくない。

「今夜だけで良い。帯刀をオレに貸してくれ」
「はい?」

手を合わせ大袈裟なぐらいの頼み方に一瞬何を言っているのか分からなかったけれど、良く考えればすぐにその意味を理解する。

ヒノエさん、あなた一体何を考えてるんでしょうか?

「な、いいだろう?こう言う時は酒を呑んでどんちゃん騒」
「絶対駄目です。そう言う所には渓と龍馬の三人で行って来てください」
「もちろん二人は誘った。だが帯刀は同じ親の立場として意見が合うんだ。だからな」
「理由は聞きません。明日は最終決戦なんですよ」
「だから余計にだ」

怒りをあらわにしてもう反対しているのに、ヒノエさんは食い下がらず屁理屈ばかり言ってくる。

今夜は一緒いたい気分なのに、なんでそう言うことを分かってくれないの?
それに帯刀さんはまだ親ではない。
だけどヒノエさんが聞くってことは、実は帯刀さんも乗り気だったりする?
そしたら私が今言ってることはワガママ?

「・・・帯刀さんが行きたいと言ってるんですか? 」
「帯刀にはまだ聞いてない。ひょっとして帯刀がよければ良いのか?」
「そそれは・・・・ 」

少し落ち着くことが出来て確認するとそう言うわけじゃなかったけれど、そう言うことなら許可を出さなければなりそうになる。
わがままばかり言ってたら嫌われてしまう。

でもやっぱり・・・

「夕凪。声を張り上げてどうしたの?」
「帯刀さん・・・」
「な帯刀、これから呑みに行こうぜ?」 

少し慌てた様子の帯刀さんがやって来て私の心配されるけど、ヒノエさんに先を越され気軽に誘われてしまう。
頭では分かっていても心はついていかなくて泣きたい気持ちで見守っていると、帯刀さんは私を見てすべてを理解したかのようにクスッと笑う。



「すみません。今夜は妻と過ごしたいんです。また今度誘って下さい」
「そう言わずにさ」
「ヒノエさんは大事な日の前日は最愛の人と過ごしたくないのでしょうか?」
「う、そそうだよな。オレが悪かった。凪も嫌な思いをさせて済まなかった」

なんの迷いもなくヒノエさんの誘いをきっぱり断り、私には無理だった説得も軽々してく元の静けさに戻る。
ただ納得してくれたヒノエさんはますます寂しそうになり、 私に謝り肩を落とし重い足取りで出てていく。

ヒノエさんも奥さんが恋しくなってしまったんだろうか?
なるか。

「夕凪、もう大丈夫。私はどこにも行かないから」
「はい。ならもう少しで終わるので、部屋で待ってて」
「どこにも行かないと言ったでしょ?手伝うよ」
「ありがとうございます。では食器を拭いてください」

私の不安などすべてお見通しのようで聞きたかった言葉を聞かせてくれ、すっかり安心してにっこり笑顔になる私にそれ以上のことをしてくれる。

本当にどこにも行かずに私の傍にいてくれるんですね?

「お安いご用だよ」

と帯刀さんは快く引き受けてくれたけれど、その後数枚お皿を割り梅さんに怒られていた。



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