夢幻なる絆

□15.遙かなる時空の中で
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「いけません」
「お兄ちゃんの嘘つき。私はお兄ちゃんより崇が好き。だから良いじゃない?」

ヒノエさんにハンバーグを教わりながら夕飯の支度をしていると、どこからか渓とマリアちゃん言い争いが聞こえてくる。
二人が言い争いをしているなんて珍しい。

お兄ちゃんより崇が好き。

マリアちゃんの恋心もついにここまで来たんだね?
渓にはお気の毒だけれど、なんか嬉しいな。
だけどそしたら一体何が原因で口論になっているんだろう?
マリアちゃんと崇くんは結婚前提の恋人なんだから、口論になる要素がないような?
興味本意全開で考えるとマリアちゃんの足音がこちらに近づいてくる。



「凪、お兄ちゃんが崇と寝かしてくれない」
「はい?」
「あ。オレの可愛いマリアが穢れていく・・・」

そしてやってくるなり私に爆弾発言の助けを求められてしまい、一緒にいたヒノエさんは当然狂い絶叫する。
いつもと同じマリアちゃんからして、手を繋いで寝るぐらいだとしか思っていない。
しかも例え真実を教えたとしても、それは生物的に自然なことだから問題ないと言うだろう。
だから渓は駄目と言っている。

「え、崇と一緒に寝ると穢れる?」
「そうだぞ。夫婦になるまで異性と寝ると穢れるんだ」
「お父さんはお母さんと夫婦になるまで寝なかったの」

ヒノエさんの明らかに苦し紛れの説得に、素直なマリアちゃんは鵜呑みにしたのか悲しそうに問う。
それは鋭すぎる突っ込み。

「・・・当たり前だろう?」

一瞬の間がすべてを物語っているけれど、それを見抜く余裕は今のマリアちゃんにはなく、ますます凹み私を見つめる。

なんかすごい嫌な予感。

「凪もそうなの?」
「私は告白がプロポーズだったから・・・」
「へぇ〜帯刀もやるね?オレは出会った瞬間嫁さんととろけるような口付けはしたけどな」
「そうなの?なら口付けならいいんだ。お父さんありがとう」
「え?あ、おい。マリア待て」

馬鹿正直に答えるヒノエさんは清まし顔で進んで墓穴を堀るから、マリアちゃんは良いように解釈してしまい笑顔を戻らせ出ていく。
キスなら恋人同士なら良いはずなのに、ヒノエさんの顔は見る見る青ざめ頭を抱えフリーズしていく。

どうやらキスも駄目だったらしい。

「オレの可愛いマリアが女になっていく」
「崇くんが責任を取るって言っているんだから、問題はないですよね?」
「あるに決まってるだろう?」
「・・・・・・。それでヒノエさんはいつ奥さんと寝たんですか?」
「添い寝なら、出会って半月」
「・・・・・・。なら添い寝なら良いんですね?」
「絶対駄目だ。過ちを犯す」

聞かない方が良かったと思う驚愕の真実に呆れ果て、言葉をなくし止めていた夕飯の仕度を再開させる。

最悪最低。
それなのにその少女はヒノエさんの事を許して妻となり4人も子供を産み、現在もなお相思相愛らしい。
私だったら絶対に許せないのに、奥さんは本当に心が広いと思う。

運命の人に出逢えたから変われる。

そんな言葉がぴったり合うのだろう。


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