夢幻なる絆

□15.遙かなる時空の中で
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「マリアちゃん、すごく上手だね」
「え、見てたの?」

通しで舞終わると拍手が聞こえた直後、崇のそんな声も聞こえた。
まさか見られているなんて思っていなかった私は驚き視線を合わせると、頬を赤くそめ私を見とれる崇がいる。
心臓が高鳴り恥ずかしいと言う気持ちになり、とっさに下を向く。

「うん、見とれちゃった。誰に教わったの?」
「お兄ちゃん」
「やっぱりそうか。でも男性でも舞えるんなら僕も今度教えてもらおうかな?一緒に舞えたら楽しいからね」
「うん、そうだね」

前向きなんだろう崇の言葉が嬉しくて、笑顔になり大きく頷く。
崇と舞ったら今よりもっと楽しくなる。

「ワンワン」
「コロも舞うって」
「じゃぁ三人でいつか舞おうね」
「うん、ゆびきりの約束」

コロも嬉しそうでやりたそうだから抱き上げ、三人でゆびきりする。
コロは足を乗せてるだけだけど、それがコロのゆびきり。

いつになるんだろう?
早く舞いたいな?

「それじゃぁ休憩して、おやつにしようか?」
「うん。クッキー焼いてきたから食べよう」
「やった。ならジュース持ってくるから待っててね」

話題は変わりおやつのことになりクッキーを焼いてきたことを知ると、喜んで急いで家の中へと入っていく。

クッキーは私が焼いたんだけどそれでも・・・崇はお兄ちゃんのより私の手料理が好きと言っている。
愛する人の手料理は何よりもおいしいか。



「マリアちゃん料理がどんどん上手になっていくね?こんなの食べたことがないよ」
「喜んでくれて嬉しい」

嘘偽りのない言葉と幸せそうに食べる崇だけれど、私はやっぱりお兄ちゃんのクッキーが世界一なんだと思う。
理由は分かっていても不思議であることは変わらない。


「所でマリアちゃん、僕いいもの見つけたんだよね?」
「いいもの?」
「うん、これだよ。見つけていろいろ思い出したんだ。マリアちゃんが僕の初恋の女の子だってことに」

また話題が変わって何かの片割れのようなストラップを見せてくれて、そう言いながら私をギュッと抱きしめる。

幼い頃の記憶がないけれど、そのストラップには見覚えがあった。
お兄ちゃんが大切な物だからと言ってくれたものと良く似ている。
二つ合わせたら一つになる?

「ごめんなさい。私はその時のことを覚えてない」
「大丈夫。僕が思い出したことを全部教えてあげる。そしたら思い出すかも知れないよ?」

何はともあれ記憶にないことを謝ると、崇は怒るどころか優しくしてくれる。
崇のおかげで私は表情豊かになれたから、それは本当かも知れない。
小さい時の家族の記憶も思い出したい。

「うん、そうだね?崇、ありがとう。私の傍にいてくれて」
「それは僕もだよ。僕の未来を作ってくれたのは、マリアちゃんと渓兄なんだからね。最近見る夢はすごく楽しい夢ばかりなんだ」

いつもと同じことを崇は言う。
こんな私でも役に立てる。崇のおかげでそう言うことも気づけた。

感謝してもしきれない私の大好きで大切な人。



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