夢幻なる絆
□15.遙かなる時空の中で
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「渓さん、待ってくれ」
「追いかけてきてくれたんだな。ありがとう」
背後から聞こえた都の声に足を止め振り向くと、息を切らした都が追いかけてくる。
そんな都がますます可愛らしい。
なのに瞬と神子様と来たら笑えないほど空気が読めなく、おかげで公開告白をさせられるはめになるとはな。
都の事だからそんなことしたら予想外の行動を取ってしまうのは目に見えていたが、まさか女の神子様に堂々と公開告白するとはね?
笑いを堪えてショックの表情を浮かべるのがキツかった。
いくら優しい神子でもさすがにそれは無理だと思うし、都だって親友以上の関係は望んでいない。
その証拠に俺を追いかけてきてくれた。
「ゆき達がちゃんと話し合えって言うから、仕方がなくだ」
「誰にも邪魔されない場所に行こうか?」
「そうだな」
相変わらず都は天の邪鬼で本心を隠すつもりのため、誰にも邪魔をされたくない場所を移すことにした。
「あれは本気なのか?」
「いくら俺でも冗談でプロポーズはしないけど」
「でもあたしはお前とまだ付き合ってもいない」
「そうだな。だから都が大学を卒業するまでは恋人になるだろう?三年も付き合えば妥当だと思うぜ?」
「なっ?だったらまずは告白が先だろう?」
早速質問攻めにあい一つ一つ答えれば、都だしからぬ乙女チックな問いが返ってくる。
プロポーズよりも告白されたい。
プロポーズも告白も大差ないと思うが、ここは都の望み通りするか。
「都、愛してる。俺と付き合ってほしい」
「どうしてよりにもよって私なんだ。私よりもゆきの方がなん億倍も女らしくて可愛いだろう?」
「俺には都の方が美人だと思うぜ?ぶっきらぼうでも優しくて頼りになる女性だけど本当は自分が嫌いで弱い。それに俺は温室で育った花より野に咲く花の方が好きだからね」
ストレートの告白にも受け入れてはくれず、やっぱり神子を過剰評価しなぜか俺に問う。しかしそんなこと少しも思ってない俺は迷わずに都を口説き続ける。
確かに神子は可愛らしく護ってあげたくなる女性ではあるが、あいにく俺のタイプではないしあちら様も興味はないだろう。
「それってある意味私のこと貶してないか?」
それでも眉を曲げ言葉を疑う都。
温室で育った花とでも言われたかったのか?
都に限ってそれはないとばかり思っていたが。
「いい加減にしないとその尖った唇を奪うけど、そっちの方が良いとか?」
「良くねぇよ。そう言うことを言うから信じられねぇんだろう?そもそもあたしはお前の事をもっと知りたいとは思う程度だから、いきなりプロポーズされても迷惑なだけだ」
ここでようやくもっともな答えが返ってくる。
「それでいい。お前が卒業するまでに、俺なしでは生きていけない。と言わせるぐらい夢中にさせるからな」
「は、んなこと死んでも思わねぇよ。お前の方こそ私なしでは・・・・」
売り言葉の買い言葉になりすごいことを言い掛け、慌てて口を塞ぐ愉快な都。
ここで抱きしめ唇を奪えば多くの女性は落とせるけれど、都は天の邪鬼だから何をされるか分からない。
しばらくは
「覚悟してろよ。俺の神子姫様」
「え、なっ?」
と耳元で囁き、頬に軽くキスをした。
再び顔を真っ赤に染まらせ湯気まで立たせるが、不思議なことに拒絶はされなかった。