夢幻なる絆
□15.遙かなる時空の中で
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「都に彼氏か。渓さんは見る目がありますね?都って可愛いんですよ」
「光る原石って言う奴だね?」
少しだけ羨ましそうにでも喜んで言うゆきに、聞いて私も微笑ましく思いながら呟く。
都みたいなツンデレはデレが最強だろうし、化粧をちゃんとすればモデル並みの美人になるだろうね?
美男美女カップルか。
「それであなた達はゆきになんのようなのですか?」
「あ、そうだった。アーネストがゆきに用があって、私達はその付き添い」
不満な表情のままの瞬は今度は私達に問い、私はすぐにアーネストにバトンを渡す。
ここまでお膳立てすればもう私のお役目はごめん。
後はアーネスト次第。
「アーネスト、久しぶりだね。元気だった?」
「え、体の方は元気でした」
「そう。なら良かった」
ゆったりとした会話が続く。
私なら間違えなく罵倒している所なんだけど、ゆきは何も聞かずに終わらせるのだろう。
しかしそれでアーネストの気が収まるはずがない。
「ゆき、今まですみませんでした。自分のことで精いっぱいで、子供のようなワガママを言って困らせてました。もう解決いたしましたので、天の玄武としてこれからは勤めていきます」
流石に詳しい内容は伏せ熱意ある言葉に首を下げ謝罪。
もし私と帯刀さんがいなかったら、理由を話したのだろうか?
・・・私に振られた。
さすがに死んでも話したくないかも?
「解決したなら良かった。改めてこれからも宜しくね」
「ゆきは優しいですね?こちらこそお願いします」
そして握手を交わし、問題はあっさり解決。
これによってゆきの好感度はうなぎ登りで、もしかしたらアーネストも?
咲ちゃんじゃないんだ。
「夕凪、また余計なこと考えてない?」
「え、私はただアーネストの好きな人はどっちになるのかなって」
アーネストとゆきを眺めていていると、帯刀さんに不振の目を向けられてしまう。
一応問われるも帯刀さんだから、私の話に考えなんて筒抜け状態。
「いくらなんでも失恋したばかりで次の恋をすぐに出来るわけないよ」
「でも傷ついて弱った時に優しくされれば、あっさりと落ちるじゃないですか?」
「確かにそうなる場合もあるね。だけどそれは夕凪には関係ないことでしょ?」
「まぁそれはそうですが」
強気に自分の意見を述べ分かってくれたものの、痛いとこをつかれそれ以上は何も言えなくなる。
これ以上は私に関係のない事だから、口を出したらいけません。
それぐらい良くわかってます。
「それじゃぁ私達はもう用済みだから帰るよ」
「分かってますが、その凹むような言い方止めて下さい」
「そう?それは悪かった。では神子殿達、私達はこの辺で失礼します」
忠告してもあまり悪いとは思ってなく軽くあしらわれ、ゆき達に別れを告げ再び馬に乗る。
今回に限って私は厄介者ではないのに、なんでわざとそういうこと言うんだろう?
「小松さん、待って下さい。黒麒麟の封印なんですが、明後日にしようと思います」
「分かりました。伝えておきます」
黒麒麟のことはすでに報告済みらしく、思っていたより早い討伐日を告げられる。
そりゃぁ急いだ方が決まっているけれど、下準備とか心の準備とか出来てるんだろうか?
なのに帯刀さんは冷静に聞き入れてしまう。
「凪さん、その時は私に四神の札を貸してくれませんか?」
「それなら大丈夫。四神達は人の姿で、同行するって言ってたから」
「本当ですか?それなら良かったです」
今度は私に真剣な眼差しを向けられ頼まれるけれど、四神達はそのつもりいること答えるといつものゆきに戻る。
そして帯刀さんは馬を走らせ私を我が家に送り届け、自分は藩邸に一旦戻るのだった。