夢幻なる絆

□15.遙かなる時空の中で
12ページ/28ページ

「都、本当にこれで良いの? 私と都は親友でしょ?」

こう言う時は必ず強気になるゆきだけれど、さらりと都をばっさりと振る。
でもこの言い方だとさっきの告白は、本気ではないと思う。

「あいつのさっきの言葉は本気だと思うか? 軽くて軽薄でチャラくて女を軽く見てるゲス男なんだぞ?」
「何もそこまで言ったら可哀想だよ。しかも似た言葉・・・」

都から見る渓は最悪で、マリアちゃんから聞いたのとは大分違う。
これでは完全な渓の一方通行でしかないと思うんだけれど、渓自身もいくらか勝算があるから告白したんだよね?

「確かにあいつはろくな男じゃないな。他人の粗を見つけて怒らせる天才」
「だよな? あいつの言葉なんていつも偽りで、都合が悪くなるすぐにはぐらかすんだよ」
「まったくだ。奴と関わるのは時間の無駄で腹が立つだけだ」

瞬も加わり渓の悪口は悪化していく。
知らない人が聞いてたら絶対誤解を招きそうな言われよう。

でも私は渓の良いところをたくさん知っている。
なんでもこなせる天才肌で、家族や仲間思いで優しい人。特にマリアちゃんに溺愛していて、マリアちゃんを傷つける人には容赦をしない。
だからマリアちゃんに嫌われている瞬には、卑劣で最低に見えるのかも知れない。

「だけどまぁマリアにとって優しく頼りになる兄貴で、私にも気まぐれなのかまともなことを言って優しかったりする」
「なんだ。都も渓さんのこと好きなんじゃない?」
「!! なんでそうなる?その気まぐれだって最後には・・・」

さっきまで悪口を言ってたのに突然しおらしく渓の良いところを語りだし、ゆきは安心したのか笑顔でそう言った。
図星だったらしく否定もするけれど、最後は頬を染め黙ってしまう。
とんだツンデレだ。

「都くんもなかなか面白い子だね?これからもいろいろ大変だろうね?」
「もうその言い方誤解を招くので辞めて下さいよ」

その様子をクスクス笑いながら言う帯刀さんは、完全にどSになっていて呆れて寒気しかしない。
妻が個性豊かな私なんだから、そう言うのがタイプなんだろうけど。

「都、自分の素直な気持ちを言わないと絶対後悔しちゃうよ」
「・・・・でも仮にあいつを好きだとしても、私は崇のようにすべてを捨てる覚悟なんてないんだ」
「都・・・」

ここでようやく都の本音を引き出すけれど、それにはちゃんとした理由があった。
普通ならそれは当然の悩みだし、南方先生だってきっとそうだ。
悩まなかった私と崇の方がレアなケース。

でも・・・

「それ渓に話してみなよ。ひょっとして解決策があるかもよ」

余計なお世話だとは思いつつも、そう言わずにはいられなかった。

もしも都が渓のことを少しでも思っているならば、ちゃんと話し合って結論を出せばいい。
そしたら後悔をしたとしても悔いは残らないと思う。

「私もそう思うよ。それに渓の告白は本当だったはずだよ」
「・・・。話してくる」

帯刀さんの後押しに都は何を決心したようで、そう言って渓の後を急いで追っていく。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ