夢幻なる絆

□15.遙かなる時空の中で
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「夕凪、渓とアーネストを連れて一体どこ行くの?」
「どこって、リンドウ邸です。アーネストがゆきに謝りたいと言うから、付きそいで行くだけです」

出来れば会いたくなかった帯刀さんと西郷さんにバッタリ出会い、見るらにして無茶苦茶苛立っていて迫力もあり怖い。
西郷さんなんか顔に手を当て深い溜め息を付く。予想がついたらしい。
私だってアーネストと一緒にいることが気にくわない事ぐらいわかっているから、下手に動揺せず冷静に理由を答える。
渓がいることで苛立ちが軽減されると良いんだけど。

「そう。なら私も一緒に行くよ。西郷は先に戻っていて」
「やっぱりそうなるんですね?まぁ特に急ぎの用事はないですから何も言いませんが、日が沈む前に藩邸へ戻って来てくださいよ」

相変わらず上司に対しても平気で言い過ぎだろう事を平気で言う。
普通の部下はここまで言わない。

「何その子供のような扱いわ?言われなくても分かってるよ。妻が何か飛んでもないことをやらかさない限りは戻るから」
「そこが一番心配なんです。凪、大人しく付き添いだけしてくれよ」
「わ分かってますよ」

結局いつも通り最後は私の行動次第となり、私に釘を差しお疲れ模様の西郷さんだけ藩邸の方に去っていく。
残った帯刀さんは私の手を取り、自分の前に乗せる。

「これで少なくても転けることはなくなる。落馬も私が傍にいるからありえない」
「ですね?」

完全に機嫌は直り私を片手で抱きしめ、満足そうな笑みを浮かべる。私もつられて笑う。
嬉しいけれど、まだ少し恥ずかしい。

「サトウくんと無事にわだかまりが解けたみたいだね?」
「私はわだかまりじゃないですが、ウィル先生にきっぱり振って下さいと言われて、きっぱり振ったら元の鞘に戻りました」
「そう。ウィル先生の助言ね?」

絶対罠だろう発言に正直に詳細を話すと、微かに黒い感情が流れて来る。
ウィル先生がここにいないのが救いだけれど、後で嫌味の一つや二つ言わないか心配だ。

「ウィル先生に噛みつかないで下さいよ」
「そんな大人げないことするわけないでしょ?」
「本当ですか?」

念を押して見たものの軽くあしらわれるだけだけれど、今までの行いからどうしても信用出来なくて疑ってしまう。

「本当だよ。それにウィル先生は夕凪を相手にするわけがないし、夕凪もウィル先生は先生でしかないでしょ?」
「あ、そう言うことですか。まったくもってその通りです」

しかし今回は本当に大丈夫らしく理由もはっきりしていて安心する。

南方先生にも最初は警戒してたけど、今では何も言わない。
相手がいるから安心なんだろうか?
龍馬に対してはたまに除け者にしていたから、違った意味で嫉妬しているだけ。
となるとさっきの黒い感情は私に向けたもなんだと思う。

「それでサトウくんには何を言って振ったの?」
「私は帯刀さんを何よりも愛して尊敬もしているって言いました」
「はい、良く出来ました」

絶対聞かれると思った問いに帯刀さんの顔を見上げて自信を持って答えると、帯刀さんの満足がいく答えだったようでキスをくれた。



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