夢幻なる絆

□14.選んだ道
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「梅さん、ただいま」
「旦那様、奥様。お帰りなさいませ。四神達から事情は聞いてます。旦那様も奥様の世界に行ってきたのですよね?」
「ああ、夕凪のご両親にも会うことができたよ」
「それは良かったですね?」

マリアちゃんはもう少し祟くんと一緒にいたそうだったので私と帯刀さんは一足お先に江戸の我が家に帰り、梅さんに報告しにいくと事情を知っていた梅さんはそれだけ言い笑顔を向ける。
シュウちゃん以外の四神は龍馬と南方先生とアニーを連れて先に帰り、帯刀さんがしばらくいなくても大丈夫なように手回ししてくれたらしい。
私達にとっては四日ぶりの我が家でも、一週間ぶりの帰宅になる。

「私はこれから藩邸に行ってくる。今日は遅くなると思うから、夕凪は先に寝てなさい」
「分かってます。いってらっしゃい」

いなかった分政務はたまっていることは私にも分かっていたため、そうなることは予想の内で今回ばかりは物分かり良く頷ける。
とは言ってもある程度は、起きて待っているつもりだ。

「夕凪、いってらっしゃいの口付けは?」
「はい。気を付けていってらっしゃい」

当然とばかり不満げに口づけを迫られてしまい、ギャラリーが梅さんだけなので仕方がなく頬にキスして見送る。



「そう言えば奥様。和宮様から文が届いてますよ」
「宮ちゃんから?」
「部屋の文入れに入れてあります。お帰りになられたことをお知らせしたらいかがでしょうか?」
「そうだね。宮ちゃんにもお土産があるから、返事を書いてシュウちゃんに届けてもらおう」

仁友堂ににお礼とお土産を持って行こうとすると、梅さんにそう言われ予定の順番を変更。

いくら宮ちゃんが親しい友人でも、将軍様の正妻。
文をもらっているんなら早い所返事を書くのが、この時代では常識なんだと思う。
それに早く文の内容も知りたいのもある。

「それはいいですね?ではお茶とお菓子を持っていきます」
「お茶だけでいいです」
「かしこまりました」

さらりと言われた甘い誘惑に飲み込まれずそれだけお願いすると、梅さんは勝手場に行き私は自室へと戻る。
お菓子は南方先生達と食べるつもりなので、ここは我慢しないといけない。




『ミャ〜』
「猫ちゃん、平田さん。ただいま。仲良く元気にしてた?」

部屋にはさっきはいなかった猫ちゃんと平田さんがいて、私を見つけるなり嬉しそうにすりよってくる。
聞かなくても二匹は仲良くしていたんだと思う。
私もこんな出迎えは嬉しく、しゃがんで二匹の頭をなぜる。
うちの子達は甘えん坊さんで可愛い。

『ニャ〜ン』
「そうか。本当に良い子だね。じゃぁさっさと文を読んで返事を書こう」

問いに答えた気がして親バカになりながら、宮ちゃんの文を取り出し読む。

文の内容は以前話していたお礼のお茶会のことで、宮ちゃんと将軍様の都合が良い日が何日が書いてあって、その中で都合が良い日を私が調べて知らせればいいものだった。
普通だったらそんな事聞かずに勝手に日付を指定しそうなんだけれど、そうしない所が宮ちゃんらしいね。
そして私を頼ってくれて嬉しい。

宮ちゃんは将軍様の正妻らしく気品とかオーラは私とは正反対だけど、気取っていなくて話せば話すほど年相応の女の子で親しみやすい。
だから私達は友人でいられるんだと思う。

「そんじゃ仁友堂に行きますか?猫ちゃんと平田さんも行く?」
『ニャーン』

物の弾みでそう聞いてみると、二匹は嬉しそうに鳴き私の肩に飛び乗る。
平田さんだけならまだしも猫ちゃんもとなると、想像以上に重くって踏ん張るのに苦労します。



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