夢幻なる絆

□14.選んだ道
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「お兄ちゃんと都?」
「マリア、静かに。こう言う時は見て見ぬふりをするんだよ?」
「見て見ぬふり?どうして?」
「それは、デートだから」
「?お兄ちゃんと都は付き合ってないよ」

どこからともなくマリアと父上の声が聞こえたと思えば、相変わらずの無垢なマリアで父上を困らしている。
しかし今回ばかりはマリアの言い分は正しい。
これ以上都を刺激させないためにも、ここは第三者がいた方がいい。
しかし父上とマリアの会話はすでに都にも聞かれていた。

「おい、おっさん。マリアの言う通り私達は付き合ってねぇ!!犬猿の仲だ」
「犬猿ねぇ?オレにはお似合いだと思うけどな」
「なぁ、そそんなわけねぇだろう?」

しかしさすが父上で威勢の良い都を黙らせ、何かを確信したようにクスクス笑う。
何かとは敢えて詮索しなくても察しがつく。

「コロは本当にいつもべったりだよな?逃げたりしないのか?」
「コロは逃げたりしない。私が行く所に着いてきてくれて、迷子になったらちゃんと道案内もしてくれる」
「ワンワン」
「へぇ〜子犬の癖に賢いな?」
「うん、コロはお利口さんだよ」

無害なマリアになら何も変なことを聞かれないと思ったのか、俺達を無視するようにマリアに無理矢理話しを始めた。
マリアも不思議がらない所かコロを抱き上げて、嬉しそうな笑顔を浮かべ無邪気に頷く。
大好きなコロが誉められたことが、自分のことのように嬉しかったんだろう。
そんなマリアと都を見て父上は頬笑み、俺の耳元で楽しげに囁く。

「さすがオレの息子だな。祟同様都も熊野に連れて帰るべきだ」
「都を熊野へ?」
「それとも湛渓はこの先もこっちの世界へ残る気なのか?」
「残る?俺がですか?」

都を気に入ってくれたことは想定内だったが、それ以外は考えてもいなかったため戸惑う。
俺にも未来が出来て現在の目標は親友作りにしたとしても、俺は父上とマリアそれから祟と熊野に戻るつもりだった。

俺だけここに残ってなんの意味がある?
いくらマリアの衛役目がなくなったとしても、マリアのいない世界で生きるなんて考えたくもない。
そもそも都のことは好意があっても、それ以上の感情はまだないんだと思う。
それはきっと都も同じで、いくらか好意があったとしても俺は選ばれない。
敵対しなくても俺達に同じ未来はないだろう。

「湛渓もまだまだだね?恋愛に関してマリアの方が先輩だな?」
「そうですね」
「お兄ちゃん、お父さん、なんの話をしてる?」
「男同士の話だよ。な、湛渓?」
「ですね」
「ふ〜ん。そうか」

父上にはなんでもお見通しで笑われいつの間にかマリアにも聞かれ不信がられるが、マリアだからそれ以上は聞かずに納得してしまう。
都と言えば魂が抜けて灰になっている。

「マリア、都に何言ったんだ?」
「?都はキスしたことあるって聞いた」
「これはまた随分直球なことを聞いたね。それで?」
「顔が真っ赤に染まって、気を失った」
「だろうな?取り敢えず俺達の家に連れて行くか」

いくら言っても分からないマリアが、やっぱり俺や父上よりも強者だった。
無自覚だったとしても妹の失態は兄が責任を持って尻ぬぐいするのは当然で、都の看病は俺がすることにして気づいたら送っていくことにした。



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