夢幻なる絆

□14.選んだ道
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「本当に帯刀さんは目利きで買い物上手ですよね」
「私のこと惚れ直した?」
「直すも何も私は今でも惚れ続けているんですよ。なんでもそつなくこなせる旦那様は私の一番の自慢ですよ」

すべての買い物が終わり喫茶店で、デリシャスストロベリーのパンケーキを食べなからのそんな会話。
もちろん帯刀さんはコーヒーだけで、私のパンケーキをつまむ程度。
私も帯刀さんに合わせ飲み物だけにして我慢しようと思ったんだけれど、なんでもお見通しの帯刀さんに即効見抜かされてしまい我慢なんてしなくていいと言われてしまった。
そんな帯刀さんに惚れ直すと言う言葉は不適切だ。

「そう?嬉しいことを言ってくれるね。所で本当に夕凪は、私の世界で暮らしてもいいの?悔いはない?」
「いきなりなんですか?」
「前に君が教えてくれた通りの、平和で便利な国だと思う。空気が汚く自然も乏しいのはどうかと思うけれど、なによりも医療が発達していて出産もそれほど危険はないらしいね」
「そうですね。でも南方先生がいるから大丈夫ですよ」

本当にいきなりこれからの話を切り出され帯刀さんなりの考えを言われるけれど、私は当然帯刀さんの世界で暮らすと思っているから軽く答える。
帯刀さんがこの世界にいられると分かったとしても、私は何も迷いなどない。
だって帯刀さんは自分の世界で必要とされている人間だからね。

「夕凪、これは大切なことなんだよ。ちゃんとよく考えなさい」
「ちゃんと考えましたよ。それにあっちの世界には龍馬や咲ちゃんや梅さんや宮ちゃんだっているんですよ」

私が考えなしに答えていると思ったらしく強く再度言われたけれど、私なりの理由をしっかり言って分かってもらおうとした。

あっちにも私の居場所がちゃんとあるのだから、帯刀さんに心配されるほど大変じゃない。
そりゃぁ帯刀さんと龍馬だけだったら考えもんだけれど、もう私にはあっちの世界にも沢山の友達がいる。
環境はこっちよりいろいろ劣っていても、勝っている物だってあるからどっちもどっちだ。
すると帯刀さんはやっと理解してくれたのか、ようやく表情に笑顔が戻る。

「すまない。夕凪なりにちゃんと考えていたんだね。それなら一緒に帰ろう」
「はい。帯刀さんと一緒ならどこに行ったって怖くないし淋しくないです」

私の願いなんて帯刀さんがいれさえすれば、結局の所はどっちでも良い。
きっとそれは帯刀さんも同じだから、どっちに転んだとしても構わないだと思う。
二人一緒ならどこだって構わない。

「姉貴。お願いだからこんな所で馬鹿夫婦を晒さないでくれる?」
「え〜いいじゃない?夫婦仲が良いってことは胎児にも良いってことなんだからね?それにお義兄さんが相手なんだ普通ってことが無理だと思うけど」
「ふ、二人共?」

そこへ弟と雪ちゃんがやって来て普通に会話をしていたはずなのに、弟は呆れて言うのに対し雪ちゃんはニコニコ笑い言わなくても良いことをはっきりと言ってくれる。
確かにそれはごもっともの意見だけれど、それを言われたら身も蓋もない。

恐るべきオタク魂。

「雪くんは随分私のことを知っているようだね?」
「はい。だからどうぞ構わず二人の世界を堪能して下さい」
「ゆ雪、何を言いだすんだ?」
「そうだよ。そんな事言ったら・・・」
「もう遅いよ。夕凪、買い物も終わったから、私をこないだ言っていたラブホとやらに連れてって?」

テーションMAXの雪ちゃんのせいで、帯刀さんの暴走は止まらない。
それを私と弟は深いため息を付いている中、私のブレスレットが光り輝く。



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