夢幻なる絆

□14.選んだ道
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「ねぇ、マリアちゃん。ボク達少しずつだけど、恋人らしくなっているよね?」
「そう?」
「うん。だってマリアちゃんは今までボクの幸せを一番に考えていてくれたのに、初めて自分の幸せを主張してくれたよね?ボクはずーと前から、そう言って欲しかったんだ」

私は崇と話したいから一人残りお気に入りの場所で景色を眺めていると、崇は嬉しいそうにそんなことを言って私を見つめニコリと笑う。
その瞬間心臓が高鳴って体温も上がっていく。

・・・風邪?

「もし逆だったら崇も私と同じ気持ちになる?」
「もちろんだよ。マリアちゃんを誰にも取られたくないもん」

私の問いに崇は私と同じ答えを即答してくれて、私をギュッツと抱き締める。
そう言うことが恋人と言うのならば、確かに私達は以前より恋人になっているのかもしれない。
恋人とは他人の異性の好き同士だけじゃないんだ。

「だったら今私の心臓が高鳴って、体温が上がるのも恋人だから?」
「そうだよ。だってそんな感情渓兄にはないでしょ?」
「うん。この感情は崇の時だけ。だったら崇も?」
「もちろん。今もずーとドキドキしてるよ。ボクは前からだけど、マリアちゃんってば風邪だと思ってるんだもん」
「あ・・・」

ここで初めて風邪でないことが分かり、今まで不思議に思っていたことも理解する。
私が崇に自慢の彼氏と言ったりいきなり体に触れると、顔が赤くなって声がおかしくなっていた。
それは風邪ではなく恋人だからで、実際なってみると風邪とは違い心地よい。

「ちなみに異性と仲良くしているのを面白くないって感じるのは、嫉妬とか焼きもちって言うんだよ」
「そうなんだ。なら私もさっき嫉妬してたんだ」
「そうだね?ボクも嫉妬するよ」
「お兄ちゃんと帯刀と仁に?」

ゆきは崇の家族なのに私は嫉妬したから、崇だってお兄ちゃんに嫉妬するかもしれない。
でもそしたら私はどうしたらいいんだろう?

「帯刀さんと南方先生にはしないよ。帯刀さんは凪さんにぞっこんラブコだし、南方先生は異性と言うか先生だからね?渓兄には嫉妬と言うか羨ましいかな?あでも今まで通り仲良くしててね」
「崇、ありがとう」

どうやら私の早とちりだったらしく、変えなくていいことにほっとする。
お兄ちゃんはずーと私のお兄ちゃん。

「マリアちゃんは渓兄と都姉が付き合っても良いの?」
「うん。都はお兄ちゃんのこと好きだと思う?」
「まぁ好きか嫌いかと言えば好きなだとは思うけど、渓兄は本当に都姉が好きなのかな?」

変なことを崇に聞かれ答えながら都の気持ちを知ろうとしたら、曖昧な答えが返ってきて逆に聞かれてしまう。
でもそれはお兄ちゃんと同じ答えだった。
都には秘密だけど、崇には言っても大丈夫だろう。

「お兄ちゃんは都が軽い好きだよ」
「軽い好き?」
「うん。私が崇を好きな気持ちより軽いって言ってた」
「あ、そう言うことか。だったらボク達は二人を暖かく見守っていこうね」
「・・・見守る?そうだね」

やっと私の言いたいことが祟にも伝わったと思ったら、考えもしなかった提案に戸惑うも祟の言葉だから間違えないと思い頷く。
お兄ちゃんを見守るなんて違和感があるけど、考えて見れば確かにそうだ。

もしお兄ちゃんと都が恋人になったら、都も私達と一緒に熊野に来てくれる?
それとも都はゆきの親友だから、お兄ちゃんもこっちの世界に残る?

そうなったらお兄ちゃんと二度と会えなって淋しいけれど、それがお兄ちゃんの出した答えなら私は何も言わずに笑顔で頷く。
それはお兄ちゃんの言葉だから従うんじゃなくって、私自身がそれが一番なんだと思う。
お兄ちゃんのことが大好きだから、私のようにちゃんと幸せになって欲しい。


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