夢幻なる絆

□14.選んだ道
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「ねぇ、私達出直してきた方がいいんじゃないかな?」
「私もそれがいいと思う。それにしても渓さんは一体何を考えてるんだ?」

崇と話すために元の世界に帰ってきたのだけど、リビングにはお兄ちゃんと崇と崇のお兄ちゃんがいた。
崇の表情は完全に怒っていて荒れていて、それをお兄ちゃんがなだめている。
崇のお兄ちゃんは相変わらず表情が冷たい。

また崇をいじめてる?

そんな様子を見た凪と都は、顔をひきつらせ後退する。
どうしてそんなこと言うのか分からず、私は崇を助けるためドアを開けた。

「マリア?それに凪さんと都達まで?」
「お兄ちゃん、どうして崇と崇のお兄ちゃんを会わせる?」
「たった二人の兄弟なんだから、和解した方がいいと思ってな。だけどどうやらそれは無理そうだ」
「そう。ボクと瞬兄が和解するなんて無理なんだよ」
「・・・・」

お兄ちゃんも私と似たようなことを考え実行しようとしてたみたいだけど、話は決裂のようでお兄ちゃんは苦笑して崇は私の元にやって来る。
なんで崇のお兄ちゃんは、ここまで崇のことを嫌っているのか分からない。

そんなに星の一族は命までかけて、神子を守らないといけないものなんだろうか?
それとも他に何か理由がある?

「マリアちゃん、心配しなくても大丈夫だよ。それでお姉ちゃんと都姉までどうしてここにいるのさ」
「私も崇くんと和解がしたいから。私やっと崇くんの気持ちがわかった。なんで私大好きなのに崇くんの気持ちに気づかなかったんだろう?本当にごめんなさい」

私にはいつもの優しい崇なのにゆきと都には冷たくて、それでもゆきは目に涙を浮かべ懸命に話謝罪する。
私でもゆきが崇のことを大好きだってことが分かり、なぜか胸が痛くなって悲しくなっていく。
崇が幸せになってくれるのならば、私は笑顔で応援すると決めていた。
それなのに崇を私から取らないで欲しい。
そう思ってしまう。

「ボクもこないだは死ねなんて言ってごめんなさい。だけどそれはボクの気持ちを分かって欲しかったんだ。お姉ちゃんが望む未来には、ボクは消えるってことだったからね」
「そうだよね?でもこれからは崇くんにも明るい未来があるんだよ」
「うん。ボクはこれが終わったら熊野に行って、マリアちゃんと幸せに暮らすんだ」

和解はスムーズに行っていいはずなのに不安な気持ちでいると、最後に崇は私を抱き寄せて迷いなく楽しそうに答えてくれた。
凪達の言う通りで最初から私は何も心配することはなかったんだ。
祟を信じていれば良かった。
これからは何があっても、私は崇のことを信じて行こう。
崇はお兄ちゃんと一緒で私を裏切ったりしない。

「崇、ありがとう。ずーと私の傍にいて欲しい」
「え、いきなりどうしちゃったの?そんなの当たり前だろう?」
「うん、嬉しい」

私の願いに崇は当然そうに言ってくれたことが嬉しくて、心の奥が暖かくなり崇のことが今まで以上に好きになる。

「凪さん、マリアちゃん本当にどうしちゃったんですか?」
「誤解が解けたことで、崇くんがゆきを選ぶって思っちゃったんだよね?」
「前にもそれはないって言ったはずなのに、マリアちゃんは本当にバカだな。お姉ちゃんならきっとボクよりいい人がいると思うよ」

凪に理由を教えてもらった崇は、そう私とゆきに言って笑う。
私は本当に何も知らない馬鹿。
これからもっといろんなことを学んで、崇の自慢の彼女になれる努力をする。

「・・・うん、そうだね?私も今度好きな人ができたら、その人のことをちゃんと知って隠し事はしない」
「神子を想う野郎は沢山いるから、これからは回りをちゃんと見た方がいい。な、瞬?」
「なぜ俺にふる?都と凪さんは、なぜ笑う?」
『さぁ?』

ゆきにもやっと分かってもらえて本当に安心だと思ったら、お兄ちゃんは意味深なことを言い凪と都も笑う。
だけど崇のお兄ちゃんは、それが不快らしい。

私にはまったく分からない。


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