夢幻なる絆

□14.選んだ道
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「ねぇマリア。私達10年ぐらい前に会ったことがあるんだけれど、覚えてる?」
「え、何それ本当なの?マリアちゃん?」
「ううん、何も覚えてない。・・・私には小さい時の記憶がない」

話し合いになった途端新事実発覚に私は驚きマリアちゃんに確認するけれど、マリアちゃんは悲しそうに首を横に振る。
完全に私は気まずいことを聞いてしまった。
しかしこれは大切なことなんだと思う。

「都は覚えているよね?家族みんなで遊園地に行った時、祟くんが迷子になったことがあったでしょう?」
「そう言えばそんな事あったな。確かその時出会ったフランス人形みたいな女の子と軽そうな瞬と同じぐらいの兄貴が一緒・・・まさかその時の兄妹が渓さんとマリアなのか?」
「うん、そうだよ。その時祟くんがマリアと結婚するって言ってたのが凄く悲しくて、・・・二人の連絡先が書いてあった紙を破り捨てたんだ。大好きな祟くんを取られるのが怖かった」
「ゆき・・・。なんでその時私に相談してくれなかったんだ?」

ゆきと都の深刻な話が進むにつれ、ゆきは小さい時から可愛そうで誰にも相談出来ない子だったことが分かる。
今とちっとも変わらないけれど、こればかりは仕方がない。
誰も悪くない。
これからゆきは新しい恋を見つけて、悩みがあったら都に相談すれば今度はきっと大丈夫。

「私の初恋は祟で、祟の初恋も私?」
「そうみたいだね。そうか渓はそのことを知っていたから、祟くんをマリアちゃんの恋人にしたんだ」

と私なりに考えをまとめると、それはやたらに納得出来た。
ただ祟くんが合わせ世を作るからだけで祟くんを選んだんじゃなくって、マリアちゃんの初恋の人でもあるから祟くんにした。
祟くんじゃなければ、マリアちゃんの表情は蘇られなかったのかも知れない。
本当の意味での運命の人。
マリアちゃんが知らなかったと言うことは、祟くんもまだ気づいていないんだと思う。

「マリア、ごめんね。私完全にマリアを逆恨みして、酷いことばかり言ってたよね?」
「ゆきは祟を消したりしない?」
「しないよ。今まで祟くんの事情を知らなかったけれど、今は祟くんを助けたいと思ってる」

ようやくお互いに誤解は解けたようで、二人の顔に少しの笑みが浮かぶ。
これでもう敵対することはなくなったと思うけれど、二人はこれからも恋敵だから友達になるのは難しいんだろう。
こればかりはしょうがない。

「・・・ゆきは祟のことが好き?」
「大好きだよ。マリアもそうなんだよね?」
「うん。だけどもし祟もゆきの誤解が解けて、ゆきを選んだとしてもいい」
「え?」
「祟は私と熊野に行ってくれると言ったけれど、本当はゆきに気づいて欲しかったんだと思う」

思った矢先の恋のバトル開始かと思いきや、マリアちゃんは意外にも身を退く答えを平然と言う。
それは祟くんの不安を見抜いているのと、自分の幸せより他人の幸せを願える優しい子だから。
私は片想いならそう思うかも知れないけれど、両想いになったら絶対に思わない。
独占してしまう。

「まぁそれはそうかも知れないけど、祟はそれでもマリアを好きなんだろう?」
「そうですよ。私はその祟くんは知りませんが、話を聞く限りだとマリアちゃんとお似合いなんだと思います」
「そうだよ。マリアちゃんと祟くんはお似合いのカップル・・・っあ?」

マリアちゃんを励ますことに三人で専念していたら、それはゆきを傷つけることに気づいたけれどすでに遅し。
ゆきは再び悲しげに小さくなっていた。

「だったらゆき。今から祟に本当のことを話して、これからのことを決めて貰おう?」
「マリア・・・」
「マリアちゃんらしいね。私も一緒に行くよ」
「もちろん私もだ」

マリアちゃんの提案で、今度は祟くんのいる現代に行くことになった。



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