夢幻なる絆

□14.選んだ道
17ページ/31ページ


予想通りマコトのことはしばらく薩摩藩で匿うことになった。
どうやら宮ちゃんの一件以来幕府は薩摩藩には、簡単に口も手も出せなくなっているらしい。
薩摩藩の地位はうなぎ登りなんだろう。

「これからお世話になります。薩摩藩は特に医療にに力を入れているそうですね?」
「そうだよ。私の目指しているものは平等な社会にすることで、医療分野はこれからますます発展しなければならない。幸い優秀で強い志を持つ医師のお陰で、徐々に優秀な人材が育ってきてる。なんならマコトもそっち方面に進んでみる?」
「私が医学の道をですか?」

いかにも医療に興味ありますと言わんばかりの問いをするマコトに、帯刀さんはその好奇心を尊重し話を持ちかける。
まさかそんなことになるとは思ってもいなかったマコトは驚くけれど、案外マコトは医師に向いているのかも知れない。
患者の話を熱心に聞いてくれる優しいお医者さん。

「兄上、医師は多くの人を助けられる素晴らしい職業です。オレ応援します」
「そうか。ならそうします」

目をキラキラさせ薦めるチナミちゃんのおかげで、マコトは考えることなく前向きに頷いてくれた。
どうやらマコトも弟のチナミちゃんには弱いらしい。
「わかった。だったらもうすぐ来ると思うからその時に南方先生を紹介しよう。これでまたいい人材が確保できたよ」

帯刀さんはご機嫌になり、満足げにそう呟く。
きっとあるだろう深い意味は、怖いので考えないことにしよう。



「旦那様達、夕飯の支度が出来ました。それから南方先生と咲さんがいらっしゃいましたよ」
「ああ、わかった。すぐに行く」

梅さんのお呼びの声に私達は、部屋を移動する。






「南方先生・咲ちゃん。お疲れ様でした」
「ご苦労様です。何かありましたか?」
「いいえ。凪さんと玄武のおかげで被害は最小限に収まりました」

広間にはすでに南方先生に咲ちゃんがいて状況を聞くと、張り切っただけあっていい結果に終わりクロちゃんの頭をなぜる。
クロちゃんのおかげなのに私まで高評価を受けるのは、やっぱり嬉しいけれど恥ずかしくてお門違いだと思う。

「それは良かったです。それで南方先生、お願いがあるんですが」
「はい、なんでしょう?」

そんなに急がなくてもいいのにもう本題を話だし、何も知らない南方先生は不思議そうに帯刀さんを見つめる。

「チナミの兄のマコトを門下生として、面倒を見てくれないでしょうか?」
「はい、それはもちろん」
「マコトです。医学に関しては何も分かりませんが、よろしくお願いします」
「君がマコトくんですね。私は南方仁です。やる気さえあればきっちり一から教えますので、こちらこそよろしくお願いします」

突拍子でいつも周囲を驚かす私とは違い至って普通の頼みごとに、話はとんとん拍子に決まりマコトはあっと言う間に医者の卵となった。

「あれそう言えば、渓とヒノエさんはどうしたの?」
「龍馬につれられ、吉原に行った」
『・・・・・・』

渓とヒノエさんがいないことに気づいて聞いてみたら、疚しい所を当然とばかりに答えられ一同言葉をなくす。
そんな無垢な眼差しで言われても困ります。
多分マリアちゃんは知らないからそう言えるんであって、真相を知ったら怒るに決まっている。

私だったら絶対に怒ってへそを曲げ、しばらくは口も聞かない。
最悪は離婚の危機。
だけど怒るのはヒノエさんだけで、フリーの龍馬と渓は別に構わない?

「私おかしなこと言った?吉原って男性がお酒を呑んで遊ぶ所なんでしょ?」

しかし龍馬達も吉原は疚しいとこだと思っているらしく、マリアちゃんにはあやふやなことしか教えていなかった。
そんな所だろう。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ