夢幻なる絆

□14.選んだ道
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「マコト、元気そうでよかった。私のこと覚えてる?」
「もちろんです。凪さん、この度はいろいろありがとうございます」

我が家に帰り客間に直行すれば、お久しぶりのマコトがいた。
無事にたどり着いたことと、チナミちゃん同様私を覚えていてくれていたのに嬉しくホッとする。
ここまで来ればもう安心だよね?

「お礼ならクロ・・・玄武にも言ってくれる?雨を降らしたのは彼だから」
「凪さんは四神の神子なのでしたよね。チナミから聞きました。それで玄武は?」
「私はここにいる。大好きな凪の頼みだから当然のこと」
「それでも玄武、ありがとうございます。玄武と凪さんは私の命の恩人です」

紐のクロちゃんにも驚くことなく、爽やかスマイル付きの心が籠った感謝をされる。
いかにもマコトらしい。
でも私が命の恩人なんて、大袈裟だな。

「オレからも礼を言わせてもらう。凪殿、クロ、兄上を助けてくれありがとうございました」
「チナミちゃん、どうしたの?凪殿って?」
「お前前に言っただろう?尊敬してないんなら、呼びつけでいいと。だからオレは・・・」
「うん、ありがとう」

いきなりの呼び名変更に戸惑ったものの、理由がはっきりしていたため納得する。
本当は殿は格下相手のことなんだけど、ここでは格上相手みたいだからスルー。
でも変わったのは呼び方だけで、言葉遣いは変わらないようだ。
まぁチナミちゃんに敬語で話されたら、鳥肌が立つし蕁麻疹が出る。

「だったら私も凪のこと尊敬しているから、凪殿って呼んだ方がいい?」
「マリアちゃんは私の友達だから凪でいいよ」

今まで黙って聞いていたマリアちゃんがまた独特の解釈をしてしまったから、瞬時にそれを全力で否定する。
私なんかを尊敬してくれるのは嬉しいけれど、マリアちゃんには殿とかさん付けで呼ばれて欲しくない。
マリアちゃんは今のままが一番いい。

「そうなの?でも咲は凪のこと様付けだよ」
「うっ・・・、そこを指摘されると痛い」

頭の回転が速いマリアちゃんに鋭い突っ込みをされて、お馬鹿な私はそこでやっとその矛盾に気づく。

今の今まで疑問にも思わずにいた。
宮ちゃんは私に様付けされて悲しんでいたのに、私は親友であるはずの咲ちゃんに様付けされていてもスルーしていた。
それが当たり前だと思っていたけれど、そんなの当たり前なんかじゃない。
明日にでも咲ちゃんと話し合って、私も友達の呼び方をしてもらおう。

「マリアくん、妻はそこまで考えていなかっただけ。要は自分が呼びやすい好きな呼び方で相手に許可を得ればそれでいいんだよ」
「ふーん。なんとなくわかった」

私が困っていることに気づいた帯刀さんが助け船を出してくれたおかげで、マリアちゃんは少し考えた後納得してくれ笑顔を浮かばせた。
そう言う考えも一理ある。
そんな様子を見ていたマコトはクスクスと笑う。

「チナミ、私達は良い人達と巡り会えたようだね?」
「はい。凪殿も小松殿も良くしてくれますし、マリアとは仲がよい友人です。マリアの兄と父親も基本は良い方です」
「うん。お兄ちゃんもお父さんもきっとマコトの助けになってくれるよ」
「それはありがたい」

きっとマコトの目には弱冠違う感じに映っていると思うんだけど、チナミちゃんは分からないらしく嬉しそうに頷く。
ただ渓とヒノエさんのことはあまり良く思ってないらしい。
でもマリアちゃんの大切な人達だからそう言って、ますますマコトに誤解を与える。

絶対、マリアちゃんはチナミちゃんの恋人だと思っているだろう。



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