夢幻なる絆

□14.選んだ道
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「凪、大変」
「うぁ、馬鹿。伺いたててから、入るのが常識だろう?」

突然渡り廊下が騒がしくなったと思ったら、急いでいるだろうマリアちゃんが入ってくると、意外に世間体にうるさいチナミちゃんがマリアちゃんの腕を掴み注意する。
しかし私とマリアちゃんの仲だから、そんな堅苦しいことは無用だ。

「そう?凪、ごめんなさい」
「いいんだよ。それよりどうしたの?」
「でチナミのお兄ちゃんを見かけた人がいた」
「え、マコトが?」
「ああそうだ。これから探しに行くから、朱雀の札を貸して欲しい」

本当に緊急事態だった。
これは間違いなく私が待っていたあのゲームイベント。
ついにゆき達に四神の神子だってことがばれるけれど、マコトを救うためだし今ならそんなに嫌ではない。

「分かった。でも私も一緒に行くよ。アオちゃん帯刀さんを呼んできてくれる?」
「お安いご用だ。すぐに連れてくる」

言われた通り戻って来たばかりの朱雀の札をチナミちゃんに預け、アオちゃんを呼び出しお願いする。
結局政務の邪魔をすることになるけれど、知らせると約束してる以上仕方がない。
アオちゃんは頼もしく了解し、空の彼方に消えていく。

「それじゃ南方先生にも来てもらおう」
「そうだな。南方先生にいれば百人引きだ」

残された私達はそう言いまずは仁友堂に急ぎ、南方先生と咲ちゃんとも一緒に目的地まで白虎と朱雀に乗せていってもらう。
クロちゃんは力の温存のため、私の首に巻き付いている。








到着すると一足遅かったようで、すでに火の手が回っており騒ぎになっていた。

「凪さん、私達は怪我人の救護に回ります」
「オレとマリアは兄上を探してくる。シュウ、分かるか?」
「もちろんです。では凪、いってきます」
「うん。クロちゃんお願いね」
「任せておけ。すぐに消す」

ここで私達まで騒ぎ立てればそれだけ救助が遅くなるから、冷静にお互いのやるべきことを言い合い行動を開始。
いつも以上に張り切るクロちゃんは空高く登り本来の姿に戻る。
よく考えれば玄武を初めて見たかもしれない。
たちまち空一面を雨雲が多い、大粒の雨粒が次から次へと落ちてくる。

「玄武、雨だけ降らせればいいんだからね。嵐になんかしたら駄目だよ」

−分かっている。

念のため忠告すると、それは余計な心配だった。
もちろん玄武を信じてはいるけれど、調子に乗るところがあるからね。
恵みの雨を周囲の人達は喜び、火の気もだんだん弱くなっていく。
これで多くの人が救われる。

「夕凪、よくやったね?偉いよ」
「帯刀さん。でもこれは玄武のおかげですから、後で誉めてくださいね」
「まぁ多少は感謝するけれど、これは夕凪の考えた作戦だから、もっと胸を張ってもいいんだよ」

突然雨が掛からなくなったと思ったら帯刀さんの傘に私を入れてくれて、微笑みをくれこの一部始終を誉めてくれる。
しかしそれは私ではなく玄武なのにそう言っても、やっぱり帯刀さんは甘く評価は変わらない。
そんなことしたらお馬鹿な私は図に乗るのに。

「凪、私はすごく頑張ったぞ!優しく誉めてくれ」
「そうだね。クロちゃん、お疲れ様でした。札に戻る?」
「いいや。私はここがいい。今から私とデートを」
「クロ、よく旦那の前でそんなことを堂々と言えるね?そんなの脚下だよ」

クロちゃんに戻り戻ってきて私に甘えて調子に乗った頼みごとをしようとした瞬間、帯刀さんに思いっきり捕まれ阻止される。
当たり前といえば当たり前だ。



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