夢幻なる絆

□14.選んだ道
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「凪様、お帰りなさい」
「咲ちゃん、ただいま」
「どうぞお上がり下さい」
『ニャ〜ン』
「猫ちゃんも平田さんも、いらっしゃい」

やっぱり猫ちゃんは重いため抱きかかえて仁友堂に行くと、お久しぶりの咲ちゃんに出迎えらる。
ここは咲ちゃんの家なのにお帰りなさいと言われるのはなんだか変な気分だと思いつつ、確かにその通りだから話を合わせてお邪魔する。




「あ、凪さんいらっしゃい。未来はいかがでしたか?」
「南方先生、お邪魔します。それがいきなり三年の月日が経っていて、弟夫婦がいなければ大変な騒ぎになる所でした」
「凪さんは相変わらずすごいことを平気で言いますね」

診察室に行くとちょうど休憩タイムだったらしく南方先生一人で、問われたことを平然と答えると少々驚かれ苦笑する。
その反応はどこも同じで私がおかしいのは、ちゃんと自覚をしているつもりだ。

「ですね?でも今回は帯刀さんがいてくれましたから、余計に平気だったかも知れません」
「それもそうですね。帯刀さんは未来をどう見ていましたか?」
「見るものすべてに目を輝かしてました。特に経済と子育てに興味を持ったようです」
「帯刀さんは間違えなくイクメンになりそうですね?」

私なりの理由を付け加えると南方先生は納得してくれて、今度は未来(仮)での帯刀さんの話になる。
やっぱりそれは南方先生でも気になるらしく、話は結構盛り上がっていく。

「イクメンとはなんのことでしょう?」
「男性が育児を率先してすることだよ」
「未来では父も育児をなさるのですか?」

そこへお茶と安道名津を持ってきてくれた咲ちゃんに問われ答えると、衝撃的なこたえだったらしく驚かれてしまう。

確かにこの時代ではイクメンなんて特に武士の家系には考えられない。

「そうだよ。それだけじゃなく家事を手伝うのも当たり前になってきて、帯刀さんも今料理のお手伝いと買い物に一緒に行ったりしてくれるよ」
「帯刀様が?」
「咲さん、私もこれからは家事を手伝います」
「え、よろしいのでしょうか?」
「はい。もちろんです」

どうやら私はつい余計なことを言ってしまったらしく、可愛そうなことに南方先生は自ら家事を手伝う羽目になってしまった。
偉そうに言ったけれど実際私の家事なんてたまに料理をすることぐらいで、後はすべて梅さん達女房がやってくれている。
でも咲がやっている家事と言うのは本当の家事で、南方先生は私より家事をすることになると思う。

「凪様、どうかなされましたか?」
「あ、私も料理だけじゃなく、掃除と洗濯もして主婦らしいことをしないといけませんね」
「凪さんはこれからは子育てに専念すれば良いと思いますよ。餅は餅屋と言いますし」
「それある意味貶していませんか?」
「そんなことないですよ。紛らわしい言い方をして、すみません」

南方先生が嫌味なんて言う人じゃないとは分かってはいるけれど、どうしても嫌味に聞こえるのは私の悪い癖。
そんな言いがかりを付けられた可愛そうな南方先生は、真に受けて申し訳なく謝られってくれる。

・・・私って本当に心が醜い女だな。



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