夢幻なる絆

□13.新しい選択
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「・・・あれ?私はまた・・・」

目が覚めるとそこは自室で私は布団に寝かされていて、帯刀さんはかすかなろうそくの明かりの下で読書をしている。
帰る途中で意識をなくしたと言うことはそこで私は寝てしまい、帯刀さんがこうして私を介抱してくれた。
あんなに怒っていても、帯刀さんは優しいから。

「帯刀さん、ありがとうございます」
「夕凪、起きたの?よく眠れた?」
「はい。とっても」
「そう。なら夕食にしようか?今ならまでみんないると思うよ」

やっぱり怒っている様子はなく私の元にやって来てくれて、そう言いながら私を抱き上げた。
帯刀さんは人前では厳しいけれど、我が家では途端に甘くなる。

・・・アーニーより帯刀さんのお姫様だっこの方が心地良い。

たかが軽い捻挫なんだから歩くことも出来るけれども、私は甘え坊だからついつい甘えてしまう。
せめて今日だけはこうやって甘えても、帯刀さんは怒らないだろう。
むしろ嬉しいはず。





「梅、私と夕凪の分を用意してくれる?」
「はい、かしこまりました。奥様、軽い捻挫だけでよかったですね」
「はい。ご心配をおかけしました」

広間から出てきた梅さんに帯刀さんはいつものようにそう言うと、梅さんはニコニコ笑顔のまま頷き私の事も機に掛けてくれる。
その言葉の裏には、それ以上の意味があるに違いない。
あえて気行かなくても見当は付くから、スルーしておこう。
口に出されたら恥ずかしい。

「凪、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」

そこにマリアちゃんも出てきて悲しげに問われるから笑顔で返せば、マリアちゃんも安心したように笑う。
マリアちゃんの表情が戻ってからと言う物の、喜怒哀楽が豊かで可愛さに磨きが掛かったようだった。
だから私は前よりも余計マリアちゃんに、普通ならば当たり前の未来をあげたいと思っている。

「良かった。今夜の料理は凄く美味しい」
「龍馬が持ってきた寒ブリだっけぇ?帯刀さんがお願いしてくれたんですよね?」
「ああ。龍馬の目は何に対しても確かだから、たまにこうして頼んでいる」

話題は夕食のことになり、匂いまでする物だから、一瞬で私の頭は寒ブリでいっぱいになる。
匂いからすると、今夜のメニューはお鍋。
ルンルン気分で広間の中へ

「おおはよう。ようやく起きたか。お前は本当に寝てばっかだな」
「うっ、痛いとこつかないで」
「夕凪は私だから寝れるの。紛らわしい言い方をしないで」
「そうか。よかったですね」

すでに出来上がっている龍馬にからかわれるが、帯刀さんに交わされ会話は終了。
確かに龍馬の言う通り私ってば帯刀さんにせおわれている度寝てばっかりで、帯刀さんの言う通り心地よくって安心出来る帯刀さんだけ。
アーニーの時は、眠くならなかった。

「ああ。龍馬もそろそろ本気になって、神子殿にアプローチしてみたら?結婚とは良い物だよ」
「祟に振られたのが相当で吹っ切れるまでは、そっとしといてやった方が良いらしい」
「だから龍馬さん、そんな悠長な事言っていたら泣きを見るだけですよ。恋は先手必勝です」
「そりゃぁそうだが・・・」

帯刀さんの言葉がきっかけに恋愛には弱気な龍馬は困り果ててそう言うけれど、それには反対らしい渓は強気で帯刀さんが前回言っていたように後押しをする。
しかし龍馬の反応はどうもイマイチでお酒を再び呑み始め、きっとこれはいつもの酔いつぶれるまで呑むパターンだと直感した。
龍馬の気持ちはすごくよく分かるけれど、そう言うのは辞めて欲しい。

「・・・はぁ。たまには私が先に酔いつぶれようかな?」

ため息と一緒に愚痴がこぼれてしまい、龍馬以外の三人は一斉に私を見つめ唖然となる。



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