夢幻なる絆

□13.新しい選択
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「夕凪は、どうして私の言うことが聞けないの?あれほど足元を注意しなさいと、毎回忠告してるでしょ?胎児に何かあったらどうするの?」
「ですよね?本当にすみません」

アーニーとウィル先生から詳しく事情を聴いた帯刀さんは、こめかみをピクピクさせ笑っていない笑顔で同情が一切なしの怒りの刃がもろに飛ぶ。

怒られるのはごもっともです。
きっと今の帯刀さんに私と子供どっちが大事と聞いて も、速攻で子供と断言するんだと思う。
分かりきっていても口に出されたら、傷つくから黙っていよう。

「凪のお騒がせぶりには毎度毎度ひやひやもんだな。その上尋常じゃなくなる帯刀はこどうしようもない?」
「小松さんは凪さんのことになると、人格が変わりますからね」
「Mrs.凪は幸福者ですね」

おそらく私達夫婦に毎回振り回され続けてもううんざりなんだろう龍馬が愚痴を吐けば、アーニーも苦笑しながら頷きそう付け加えた。
私のせいで帯刀さんが徐々に変人となっている気がする。
そんな中ウィル先生だけが、弱冠違う解釈をして微笑む。

確かに私は愛されて幸福者だけれど、この場合は貶されているだけなんだから違うと思う。
・・・厳しさの中にも愛情があるという解釈ならそうだけど。


「サトウくん、ウィリス先生、妻が大変お世話になりました。夕凪、帰るよ。おぶってあげる」
「え、あはい。二人ともありがとう。またね」

おぶってくれるのには多少抵抗があるもののこれ以上逆鱗に触れたくないので、話を合わせ帯刀さんの背中につかまる。
それに理由がどうあれアーニーにお姫様だっこしてもらっているから、夫である帯刀さんの申し出を断るわけにはいかない。

「今度は、マリアと咲さんと一緒に来てくださいね」
「それは良いですね。その時はまたアフタヌーンをしましょう?」
「うん、。なら今度は三人で遊びに来るね」

帰り際にそんなたわいのない約束をして笑顔で部屋を出るのだけれど、それを快く思ってないのは言うまでもなく帯刀さんだった。
いきなり漂い始める張り詰めた痛い空気でよく分かる。

帯刀さん、いい加減妻のことを信じて下さい。
私は浮気など絶対に致しません。
帯刀さんより好きになるなんてありえない。

「帯刀、そろそろ凪を信じてやっても良いだろう?」
「信じてるよ。だけどそれが面白くない。もちろん夕凪と龍馬が仲良くしてるのもね」
『・・・・・・・』

龍馬も私と同じことを思ってくれたらしく代弁してくれたけれど、例のごとくと言わんばかりの胸を張った分かりやすい回答だった。
帯刀さんの嫉妬深さは相変わらず一級品。
咲ちゃんが一緒でも許可は降りないなんて、束縛するのもさすがに度が過ぎている。
だけどそれでも内心嬉しいと思ってしまう私は、帯刀さん並みにおかしいんだと思う。

「・・・だったら帯刀さんも一緒に行きますか?」
「そうだね?国際交流もたまにはいいね」

こう言う時の対処法を知っている私は帯刀さんも誘えば、気分を良くしてくれたのか賛成してくれる。
どうやらこれが求めていた答えだったらしい。

そして私達は馬で我が家に戻るのだった。
外に出るといつの間にか日が暮れていて馬に揺られているうちに、ウトウトとしてしまい記憶がなくなってしまった。



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