夢幻なる絆

□13.新しい選択
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「そんじゃぁ、捜しに行くかな?」

お菊ちゃんに遊んでとせがまれ三人でかくれんぼをすることになり、私が鬼で一分が経ちいよいよ探しに行こうと辺りを見回していると、アーネストがこちらへやってくるのに気づく。

そう言えば英国大使館って、千鳥ヶ淵の近くだったよね?
天気が良いから散歩でもしてたのだろうか?

「凪さん、こんにちは。こんな所で何をしてるんですか?」
「こんにちは、アーネスト。知り合いの子とかくれんぼ。私が鬼でこれから探しに行く所」
「かくれんぼ?相変わらず凪さんは幼稚ですね?一体あなたはいくつなのですか?」
「そこは面倒見が良いとか言ってよ。何も率先して遊んでいる訳じゃないんだから」

たわいもない挨拶が嫌み込みで、笑顔をひきつらせ話を合わせる。
どうやったらそんな結論になるのかが知りたい。
いくら私でもかくれんぼが大好きなはずがない。
笑えない冗談でも限度がある。

「それは失礼。凪さんは面倒見がよろしいのですね?ただはめをはずして、転ばないように気を付けて下さい」

失礼だとは微塵にも思っていないだろうオウム返しのように言われ心にもない心配までされる始末。
相変わらず頭に来る奴。

「そそうだね。じゃぁ私はこれで、失礼するね」

ゲシ


ムカッとしつつも平常心を保ちそう言い歩き出した直後、お決まりと言うべきなのか石につまづきド派手にこける。
だから私はアーネストのいいかもだ。

「・・・・・。忠告してすぐこれですか?お手をどうぞ」
「うっ・・・すみません」

これには罵られても何も言えずアーネストの手を取り立ち上がろうとするけれど、突然足首に電撃が走るような痛みを感じ立ち上がれなかった。
運が悪いことに捻ったらしい。

「?凪さん、どうしました?」
「捻挫したかもしれない」
「捻挫?では凪さん、失礼します」

いくら皮肉屋のアーネストでも友人の怪我には他人事ではないようで、そう言った後当然とばかりに私をお姫様だっこをする。
これは緊急事態だったため私は恥ずかしがらず、アーネストにしがみつく。
これでまた転倒したら、馬鹿馬鹿しい。

「ありがとう、アーネスト」
「友人として当然ですよ。ここからなら英国大使館が近いので、そこで手当てをしましょう?」
「重ね重ねすみません・・・」

今のアーネストは本当に白馬の王子様みたく紳士的で、帯刀さんがいなかったら惚れてしまいそうだった。
今でさえ少しだけドキドキしてしまう。
なんて帯刀さんに言ったらお仕置き間違いないけれど、言わないでバレたらそれこそ大変だからな。
ここは潔く白状して、可能な限り甘えよう。

「凪様、どうかしたのか?」
「あ、喜市くん、ちょうどいい。私捻挫したかもしれないから、悪いけれど医者に見てもらってくるね」
「捻挫?相変わらず凪様はそそっかしいな?お菊はおいらが探しておく。それと梅さんにアーネストさんが一緒だからって言っとくよ」
「ありがとう、喜市くん」

何かを察知したのか私達の元にやって来た喜市くんは、お願いしなくてもすべてを快く引き受けてくれる。
喜市くんにとってアーネストも常連さんだから、異人であっても何も偏見持たず接していた。
そりゃぁ最初は異人を見たのは初めてらしくビクビクしていたけれど、今ではアーネストがウザいと思うほど店の常連さん達にも話しかけられている。



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