夢幻なる絆
□13.新しい選択
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「あ〜?」
「え、誰?」
気がつくと知らないかわいい男の子が無垢な眼差しで私を見つめていた。
年で言うなら三歳前後ぐらい?
なんとなく幼い頃の弟に似ているけれど、この子は一体誰?
「ママ〜」
「何、ようちゃん?え、お義姉さん?」
「は、雪ちゃん?」
男の子が母親を呼び現れたのは雰囲気が変わった雪ちゃんで、私がいることに偉くビックリしていて違和感を感じる。
頭の中が大パニックを起こす。
雪ちゃんを男の子はママと呼び、そんでもって弟似。
だけど雪ちゃんのお腹はまだ大きい。
そう言えば部屋の雰囲気も違う・・・。
まさか私また?
「お義姉さん、落ち着いて聞いて下さい。ここは三年後の世界です」
「やっぱりそうか。私にとっては一ヶ月ぐらいなんだけどね」
予想通りの答えに意外にも我に返り、そう言い近くのソファーに座る。
しかし三年も私がいないとなると、結構騒ぎになっているのかも知れない。
「お義姉さん、冷静なんですね。お義姉さんは駆け落ちしたと言うことで、純ちゃんが色々手続きをしてくれました」
「迷惑をかけてすみません。両親はカンカンでしょうか?」
「はい。真実を話しても信じてもらえず相当怒って勘当だとか言ってましたが、今はただお義姉さんの帰りを心待ちにしていると思います」
弟に最大級の迷惑と両親にとんでもない心配を掛けてしまったことに、なにをどうやれば恩を返せるか悩みどころである。
とにかく実家に帰って私の口からちゃんと話して、帯刀さんからの文を渡そう。
それでも信じてもらえなかったら、諦めるしかないかも知れない。
「少しの間厄介になると思うけど、大丈夫かな?」
「もちろん、大歓迎です。ようちゃん、この人はパパのお姉さん。これから仲良くしてね」
「パパのねぇねぇ?ようちゃん、よろしく」
「こちらこそ宜しくね」
相変わらず雪ちゃんは優しく私を歓迎してくれて、私の正体を知ったようちゃんはありったけの笑顔を浮かべ抱きつく。
「それにしても不思議ですよね。三年ぶりなんて」
「そうだね。それでいて雪ちゃんは二人目を妊娠中。弟と上手く行ってるんだ」
「派手に喧嘩もしますが、おかげさまで家族仲良くやってます」
とにかく幸せそうな雪ちゃんは、そう照れ臭そうに現状を教えてくれる。
それを聞いて安心。
大喧嘩が出来るってことは、それだけ仲が良いって証。
できちゃった結婚でもこうやって円満な生活が送れるのなら良いよね。
「ようちゃんは、パパ好き?」
「うん、大好き!」
「そうかそうか。ようちゃんは、可愛いね」
微笑ましくてようちゃんにも聞いてみれば、ようちゃんは迷うことなく元気に答える。
どうやら弟は息子にとっても良きパパで、何も心配はいらない幸せいっぱいの家族らしい。
これぞまさに理想の家族で、私が思い描いている家庭。
「あ、ママ。もう一人いるよ」
『へぇ?』
ようちゃんが私の背後を指さし笑っ教えてくれる。
不意にただならぬ予感がして恐る恐る後を振り向けば、そこには信じがたい人物がいて目を疑う。
なんで彼がここにいる?
こんなこと今までなかった。
「た帯刀さん?」
「ほ本物?来ました!!」
「あっ?」
やっぱり帯刀さん本人で、雪ちゃんのテーションがMAXとなった。
嵐はまとめて、突然訪れる。