夢幻なる絆

□13.新しい選択
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「マリアちゃん、料理の腕あげたね。どれも美味しいよ」
「ありがとう。祟が手伝ってくれたから、うまく作れた」

シチューを一口食べ絶妙な隠し味が美味しくてマリアちゃんに絶賛すると、まんべんな笑みを浮かべ喜び無意識だろう祟くんとラブラブぶりをアピール。
ヒノエさんの眉毛がピクリと動き手を止める。

怖い。

「マリアちゃん、あんまりヒノエさんを刺激しない方がいいよ」
「私なんか変なこと言った?」

無自覚は可愛いけれど、もっと怖い。
その証拠に笑顔をひきつらせた祟くんが、小声で助言しても分からないらしく首をかしげるだけ。

「マリアはそれでいいんだよ。父上もじきになれるはずだ。ですよね、父上 ?」
「え、まぁそうだな」

そこへ渓が助け船をだしてくれ、それ以上の悪化は阻止される。
祟くんを婿養子にすると決めたのに、やっぱり父親と言う生き物は難しくてデリケートなんだな。

「夕凪には関係のないことだから、首を突っ込むんじゃないよ。まぁマリアくんに相談されたら、気軽にのってあげなさい」
「分かってます」

ここぞとばかりに五寸釘で釘を刺されるけれど、それは私だって願い下げである。
この件に関しては変なことに巻き込まれたくないから、自ら首を突っ込む気はなれない。

「こうして見ると本当にマリアは母親にそっくりで自分に正直ですね。微笑ましいです」
「へぇ〜、そうなんだ?マリアちゃんはお母さん似なのか」

そんなマリアちゃんを暖かい眼差しで見つめ懐かしむシュウちゃんは、お父さんと言うよりお母さんみたいだった。
なんて言ったらシュウちゃんにお説教されるかも知れない。
シュウちゃんは一応男性だもんね。

「それは見てみたいね。マリアくん似ならさぞかし綺麗な方なんだろうね?」
「私も見てみたい」
「うん、いいよ。これがお父さんとお母さんの若い頃の写真」

興味津々の帯刀さんに便乗すると一瞬帯刀さんはムッとしたけれどすぐに戻り、マリアちゃんが快く見せてくれた古びた写真を二人で見る。
マリアちゃん似の青髪の少女と若かりし頃のヒノエさんだろう少年が笑顔で写っている。
どこからどう見ても幸せそう。

この人がマリアちゃんと渓の母親か。

「綺麗な人ですね?」
「そうだね。夕凪と違って」
「だからそこで私と比較しないで下さい。マリアちゃん達のお母さんに失礼ですよ」

どうしてそんな比較をされるのかが分からなくて、ほほお膨らませて反論する。

私は綺麗じゃないし可愛くもないのは百も承知だけど、そう天秤に掛けられ惨敗するとほんの少しだけ傷つく。
いつもそうだけど帯刀さんは、そんなこと言って何がそんなに楽しいんだろう?
まさかマリアちゃん達のお母さんに惚れたとか?
人妻でしかも四人の子持ちだよ。
だったら私の立場はどうなるの?

「本当に私の妻はすぐ顔に出るから面白い。安心しなさい。君に嫉妬をさせたくって言っただけだから」
「性格悪いぞ帯刀。凪が可愛そうだ」
「ええ。これはさすがにやりすぎですよ 」

満足したのか帯刀さんは上機嫌になり、子供じみたネタバレを明かす。

さっき一瞬ムッとなったのは、私が嫉妬しなかったせい・・・。
でも普通あそこでは嫉妬しない方が普通であって、ただ帯刀さんの性格は悪いだけ。


「そう?でもまぁ私は自分の妻がいろいろ一番だと思っているよ」
「いろいろ・・・・」

なんとなく嫌な言い方にも聞こえてしまい、どう反応すれば良いのか分からない
絶対悪い意味も混ざっていると思う。

「お兄ちゃん、やっぱりみんなで食事するのは、賑やかで楽しい」
「マリア、それはちょっと意味が違うよ」

私の事を誰もが哀れんでいる中マリアちゃんだけ楽しそうで、渓を相変わらず困らしている。
マリアちゃんにとっては素なのだから、訳も分からず首を傾げた。


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