夢幻なる絆

□13.新しい選択
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「帯刀さんは私のお父さんにぶちのめされる覚悟はあるんですか?」
「あるに決まってるでしょ?出来ることなら夕凪の両親に挨拶をしたいよ。娘さんをもらいました。何があろうとも夕凪を護って傍にいると誓わせてもらう」

私の問いに帯刀さんは迷いなく真剣に答え、そっと抱き締めキスまでしてくれる。
言うだけあって自分自身にも覚悟はあったんだ。
ただそれは無理な話。

「だったら文を書いたらどうですか?そしたら私も覚悟を決めて、帯刀さんのこと話します」

無理だから可能であることを教えて私も柄じゃないけれど、今まで隠していた結婚と妊娠を怒られるのを覚悟の上で話す決意をした。

結婚と妊娠を怒る以前に、嘘をつくなと激怒するのが現実だろうね。
弟夫婦に協力してもらって写真を見せても、多分帯刀さんのことは信じてもらえない。
まぁ、現実主義の両親だから無理もないか。

「夕凪は悪い娘で、私はとんだ悪人だね」
「悪人じゃないですよ。私みたいな娘をもらってくれた帯刀さんは、両親にしてみればむしろ神。崇められます」
「そう思っているのは夕凪だけ。いざ目の前にすれば、そう言ってはいられない」

諦めていても早く嫁に行って欲しいと願っている両親を考えながら大袈裟に答えると、首を横にふって考えられないことを帯刀さんは言葉を返す。
それでもうちの両親にはありえないとは思いつつ、もしそうだったら不謹慎だけど面白いと思う私がいた。

ホームドラマのように激怒したお父さんが見てみたい。

「・・・夕凪。そんな状況を面白がる娘がどこにいる?」
「うっ・・・」

さすが私を知り尽くしている帯刀さんだけあって何も言わなくても分かったらしく、冷たい視線を向けられ図星をつかれてしまう。
笑顔が硬直して、口ごもる愚かな私。
確かにそんな状況を楽しんでいる娘は私ぐらいだろう。
そんな薄情な娘を見たら、お父さんは悲しみ悔やむと思う。

「まったく・・・。私は今から夕凪の両親に文をしたためるから、少しの間四神達か猫と平田さんと遊んでいなさい」
「・・・はい、分かりました」

まるで私を厄介者扱いするように追い払われてしまい大人しく部屋から出て縁側まで行き、手元に残っている白虎の札と玄武の札からシロちゃんとクロちゃんを呼びだす。
現在シュウちゃんはチナミちゃんに、アオちゃんは龍馬に貸し出している。






「凪、帯刀の言の葉など気にするでない」
「え?」
「帯刀は相変わらず酷い奴だ」

なんでそう言う結論に達したのか分からない発言に私は耳を疑う。

帯刀さんは何も悪くないのに、なんでいつもこうなるんだろうか?
いくら帯刀さんのことが嫌いでも、そう言う見方はよくないよ。

「それは誤解。それに帯刀さんは私の両親に文を書くから、追い出されただけ」
「凪の両親に?何を書くと言うのだ?」
「簡単に言えば結婚報告かな?」
「今さら?」
「・・・・」

懸命に誤解を解こうとして簡単に説明すると、言わないで欲しかったことを不思議そうに聞かれてしまう。

確かにもう結婚して私の世界でも半年以上も経つのに、ヒノエさんの影響で今さら結婚報告。
しかもヒノエさんが来なかったら、しないでいたと思う。
私は何から何まで親不孝な娘。

「余計なことだったな。忘れてくれ」
「うん、忘れる」

困り果てている私に余計な気を使わせてしまい、強制的に話はまとまった。

誤解は無事に解けたんだろうか?




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