夢幻なる絆

□13.新しい選択
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「お姉ちゃん?お姉ちゃん!!」
「え、あなたは?」

特に意味もなくあえて言うなら怨霊の見回りしていると、可愛い女の子が私を見るなりまんべんの笑顔を浮かべこちらに走ってくる。
まるでその子は私を知っているようだけれども、・・・以前新婚旅行で私が怨霊から助けた女の子だった。
この子は私の事を覚えている。
私が護った命がこうして元気でいると思うと、なんだか嬉しい。
これで私を覚えている人は、チナミちゃんはともかく私との関わりが強いことが立証された。
チナミちゃんの場合は、やっぱりマコト関係なんだろうか?

「お姉ちゃん、あの時はありがとう。あたいずーとお礼を言いたかったんだけど、いくら探しても見つからなくて困ってたんだ」
「そうか。私は一月前に引っ越してきて、その前は京にいたからね。私は凪。あなたのお名前は?」
「あたいの名前は菊。ねぇ凪お姉ちゃん、うちはあそこなんだけれど、寄っていってくれる?」

お菊ちゃんの笑顔は愛らしくて私の顔はふにゃふにゃ変態になるものの、お菊ちゃんは私の手を掴み家に招待してくれる。
特に用事がない私は二つ返事で頷こうとしたけれど、良く良く考えたら私みたいいい大人がいきなり見ず知らずの家に行くのはNGかも知れない。
ここはお菊ちゃんと日時を約束してからが、遊びにいくのが正解だと思う。

「いきなり行ったらご家族に悪いから、ちゃんと」
「それなら平気だよ。お母ちゃんが凪お姉ちゃんを見つけたら、すぐ連れてきなさい。っていつも言ってるもん」
「そういうことなら、お邪魔させてもらうね」

私の気遣いはまったく無意味ですでに了解済みらしく、そう誇らしく言って手を引っ張る。
断る理由もなく逆に断ったら悪いので、笑顔で頷きお菊ちゃんについていく。





「お母ちゃん、ただいま。お姉ちゃんを見つけてきたから、連れてきたよ」
「お邪魔します」

お菊ちゃんに連れられてやってきたのは、憧れの長屋だった。
本来私みたいな人は長屋住まいでも十分なのに、家老の妻と言うだけで無縁の生活。
一度こう言うご近所はみんな家族みたいな所で暮らしたかったな。

「お菊、でかした。あなたがお菊の命の恩人なんですね?その説は、大変お世話になりました」
「あれ、凪様?お菊の命を助けたのって、凪様だったのか」
「喜市くん?」

お菊ちゃんの紹介で私を見るなり豪快に笑う私より若そうな母親と、なぜかいて驚きまくる喜市くんに私も驚く。

なぜ喜市くんがここにいる?

「喜市兄ちゃんの知り合いなの?」
「お店の常連さんだよ。こう見えても凪様は薩摩潘家老の奥方様なんだよ。凪様、お菊はおいらの妹分なんだ」
「へぇ〜そうなんだ」

余計な一言付の紹介だったけれど事実なためスルーし、喜市くんとお菊ちゃんの関係に納得する。

相変わらず私の外見中身供家老の妻に見えていません。
だけど喜市くんの場合、いい意味で言っていると願いたい。

「まさかあなた様のような高貴なお方に助けていただいたとは・・・本当にありがとうございました」
「いえいえ、私は当然のことをしただけです。それに身分が高いのは夫であり、私にはそんな価値がありません」

途端に元気はつらつそうだった母親が恐縮してしまったので、私は懸命に自分の評価を下
げる行動をする。

何度も言うようだけれど、私はそんな人間じゃない。
あくまでも御家老の奥方なんて肩書きだけなのだから、普通に接して欲しいと思うのはおかしいのだろうか?
これだからあんまり身分を明かしたくなかった。

「凪様は本当に、変わりもんだよな。普通は身分が高いだけで鼻に掛けて偉そうにするのに、凪様ときたらそれらしい素振りを見せないで、おいら達庶民とすっかり打ち解けてるんだから」
「だって私も元々は庶民育ちだし、そんなの柄じゃないでしょう?」
「それもそうだな。だけどおいらはそんな凪様が好きだ」
「なるほど。凪様はおおらかで優しい人なんですね」

喜市くんのなにげのない言葉で母親は理解してくれ、少しまだ誤解がある物の普通道理になってくれた。

おおらかで優しい人・・・ね。
そういう風に言ってくれると嬉しい。




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