夢幻なる絆

□13.新しい選択
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「間違えない。父上だ」

お兄ちゃんと連絡を取り帰って来てもらい、気絶したままのおじさんを見るなり迷わずそう断言した。
ここでようやくおじさんは私のお父さんだと証明されてしまい嬉しいはずなのにがっかりで、祟の顔色を伺うとさっきより更に青ざめお父さんのことを怯えているのがよく分かる。
そんな祟を見ていられなくって、無意識にお兄ちゃんの顔を見上げてしまう。

「お兄ちゃん・・・。お父さんは祟を殺さない?」
「殺しまではしないが、一発二発は覚悟しといた上が良い」
「うっ、やっぱり?」
「それが娘の彼氏の定めなんだから、そこは諦めなるんだな。それとも今ここでマリアと別れ・・・そんなことしたら俺が祟を殺す。どっちがいい?」
「渓兄、冗談はやめてよ。なんでボクがマリアちゃんとそんなことで別れなきゃいけないんだよ!だったら殴られて、ボク達のことを認めてもらうよ」

お兄ちゃんに助けを求めたはずなのに恐ろしいことを言って、祟を怒らせ解決にならない解決になってしまった。
きっと私には分からない考えがお兄ちゃんと祟にはあるんだろうけれど、それでも私は祟がお父さんに殴られるのを見たくない。
なにも覚えていないお父さんより、祟の方が私には大切な人だから。

「祟は私が護る。私にはお父さんなんかいらない」
「マリアちゃん、何言ってんの?この人はマリアちゃん達を探しに鎌倉時代初期から来たんだろう?それなのにそんなこと言ったら可愛そうだよ」
「そうだぞマリア」
「でも私は祟が大切で、痛い目にあって欲しくない」

祟の味方をしたはずなのに祟もお兄ちゃんの味方をするから、どうしてそう言うのか訳が分からない。
私の考えは間違っている?
どこが?

「殴らないよ。マリアが選んだ大切な人は、オレにとっても大切な人だよ」
「え、お父さん?本当に本当?」
「ああ、本当だ。そりゃぁショックで多少憎くいことは確かだけどな」

お父さんは悲しそうにそう私と約束してくれ、再び優しく抱き締められた。
暖かい優しい温もりで懐かしいかも知れない。
小さい時たくさん抱き締めてくれたから、記憶はないけど体が覚えている?

「父上はマリアに甘いですね?まぁ俺も人のことは言えませんが」
「え、堪渓なのか?」
「はい、ご無沙汰しています父上」
「お前も大きくなったな。お前はオレの事を覚えていたんだな?」

お兄ちゃんがお父さんに話しかけると私とは違うお父さんに変わり、そしてお兄ちゃんが覚えていたことが嬉しかったみたいだ。
それにお兄ちゃんもいつもと様子が違い言葉が改まっている。
私の知らない人に見えた。

お父さんに対してはそういう接し方なんだろうか?
私もそうしないといけない?

「お父さん、ごめんなさい。私お父さんのこと何も覚えていないので、お兄ちゃんみたいな正しい接し方は出来ない」
「お前はまだ小さかったんだから、覚えてなくても仕方がないよ。と言うか堪渓見たいな接し方をされたら、オレは泣くぞ」
「マリアはマリアのまま、普通にしてればいいんだよ」
「?」

怒られるのが怖いからあらかじめ謝ってみれば、どう言うわけかお父さんは悲しそうでお兄ちゃんは苦笑する。

どうして私が駄目で、お兄ちゃんいい?
それはやっぱり私はお父さんのことを何も覚えてないから?



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