夢幻なる絆

□13.新しい選択
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「凪さん、ちょっと良いですか?」
「渓、どうしたの?」

本当は梅さんの手伝いをしようとしたのに血相を変え拒否られてしまい縁側で猫ちゃんと平田さんとでひなたぼっこしていると、凹みまくった渓がやって来て何やら私に助けを求めにきたらしく元気なく話しかけられる。

こう言う時は間違えなくマリアちゃんのことで、この分だと何かをやらかしたって所だろうか?
てっきりチナミちゃんが何かをやらかして泣かすとばかり思っていたんだけれど、よりにもよって渓だとわねぇ?

「マリアのことなんですが・・・俺がチナミをからかったばかりに、話が拗れてしまいまして」
「・・・渓・・・。そんなことしたらどうなるかって事ぐらいあんたなら分かったはずでしょ?それで何を言ったの?」
「マリアの笑顔を見とれているチナミに、マリアの笑顔は可愛いだろうと」
「アホかい」

思春期で繊細なチナミちゃんに聞いてはいけない問いを投げかけた事実に、私は反射的にそう言い本を丸めて殴りつける。

そんなこと聞いたら、チナミちゃんは絶対に心にもないことを言って逃げる。
それでいて純粋で素直過ぎるマリアちゃんにはそれがどう言う事などが分からず、真に受けてショックすることは私だって想像がつく。
それなのにそれなのにこの男はなんてことをやらかしたんだ?

「すみません。ですがマリアの笑顔は世界で一番可愛いと思いませんか?」
「世界で一番かは置いといて可愛いのは認めるけれど、チナミちゃんが本人の目の前にして言えるはずがないでしょう?それでマリアちゃんは?」
「すっかり自分の笑顔に自信が持てなくなり、鬱ぎ込んでいます」

渓の言っていることは分からなくもないけれどシスコンならではで、それを同情することなく冷たく言い捨てため息をつく。

「分かった。私がなんとかするから、渓は心配しなくて良いよ」
「そんな繊細なこと夕凪が出来るの?」
「帯刀さん、おかえりなさい。私だってそのぐらいのケアーは出来ます」

これ以上渓と話せば感情がむき出しになりそうだったのでそう言って追い払おうとした時、いつの間にか帰宅したのだろうか帯刀さんの覚めた視線が突き刺さる。
それは私の日頃の行いが悪いのがいけないのだけれど、それでもやっぱりひどい扱いだ。

「だったら夕凪はマリアくんに何て言うの?」
「チナミちゃんははずがしかり屋だから素直じゃないんだよ。それに好きな相手に可愛いって言ってもらえば、他の人にどう言われようと問題なし。と言います」

こればかりは自信がある考えだから、迷いなくはっきり帯刀さんの目を見て答えた。
いちいち他人の評価を気にしていてたら、私の場合やっていけない。
だけどこの場合は照れ隠しの意味だけ教えればいいかもだけど。

「確かにそれは一理あるね。夕凪はそういう考えなんだね?」
「はい、私は帯刀さんさえ誉めてくれれば、他人の評価など気にしません」
「それでいい。私だけが夕凪をたくさん誉めて甘やかしてあげるから」
「あの、微妙に論点がずれているようなのですが・・・」

ようやく帯刀さんは私の考えをわかってくれつい二人だけの世界になってしまい、渓を困らせ言いにくそうに元に戻そうとする。
だけど論点がずれていないとは思う。

「そいういことだから渓は安心してていいよ」
「あ、はい・・・」

だから胸を張ってもう一度言ったのに、それでもどことなく不安な表情の渓だった。




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